【地球は今…】地球高温化~COP21「パリ協定」~
今回、このコーナーを担当する神戸の落合真弓です。
昨年末、パリで開催された温暖化対策の会議COP21で
締結された「パリ協定」につてまとめました。
●「パリ協定」までの経緯
・新興国のCO2排出量が急増中。
・現在、中国と米国だけで4割超、インドとロシアを加えると5割超。
・IPCC報告では「このままでは今世紀末には4℃以上上昇」と警告。
・世界各地の気象災害は多大化。
・先進国と途上国の立場や意見の隔たりは大きい。
・京都議定書の延長は2020年まで。
・それ以降の新しい枠組みが必要。
・2013年に、2015年3月末までに「各国が削減を提出すること」が決定された。
・これらの動きから、今回の「パリ協定」につながった。
◆世界の主な気象災害(2005~2013年)
(気象庁「異常気象レポート2014」より)
●「パリ協定」
1. 目標
・産業革命前に比べて温度上昇を2℃までに抑える。
さらに1.5℃以内にする努力
・今世紀後半には排出量の実質ゼロをめざす。
(森や海の吸収量とバランスさせる)
2. 5年ごとの見直し
・すべての国が5年ごとに国連に削減目標提出。
・国内対策を義務付け。
・目標は5年ごとに見直し、高めていく。
・ただし、目標の達成は義務化されていない。
3. 途上国への資金援助
・途上国への資金支援を先進国に義務付け。
・ただし総額は協定に入れず。
(別の文書に「25年までに最低でも年間1000億ドル」と書いた新たな拠出額の目標で決着)
●「パリ協定」の課題
・各国は削減目標を達成できるだろうか。
・途上国への技術支援、資金支援はできるだろうか。
・現状の削減目標では2℃未満は達成できない。
・中国、インド、アフリカ、東南アジアの途上国の経済拡大がカギを握る。
●現状 参加国のほとんどは環境より経済?
国名 | 基準年 | 削減目標 |
---|---|---|
日本 | 2013 | 2030年までに26%削減 |
EU | 1990 | 2030年までに40%削減 |
インド | 2005 | 2030年までに33~35%削減(GDP当たり) |
ロシア | 1990 | 2030年までに70~75%抑制 |
中国 | 2005 | 2030年までに60~65%削減(GDP当たり) |
アメリカ | 2005 | 2025年までに26~28%削減 |
・日本は原発の再稼働を前提。
・EUは環境重視派と経済重視派が争っている。
・中国などは「GDP当たりの排出量」を抑えても、GDPが増加するのでCO2は大きく減らない。
・米国は議会の承認が必要だが、議会では企業の圧力が強いから議会の承認が得られないかも。
※現在、大統領選の前でレームダック(議員の影響力がない)状態
・途上国への技術支援、資金支援も課題。
・各国が国内で、経済と環境の両立がとれるかどうかも大きな課題。
各国の削減目標はこちらを参考に⇒こちら
●「パリ協定」の評価
京都議定書が先進国だけの約束だったのに対し、「パリ協定」は世界のほとんどの国(195か国)が参加し、共通の目標を全会一致で決めた時点で大きな前進だ。
しかし各国の本音は「環境より経済」。
日本も排出権取引や計算上だけの目標達成を装ってきたが、本気の取り組みが必要。
そのために、下記の国民世論を大きくしていかなければならない。
・脱原発、脱火力⇒自然エネルギー、再生可能エネルギーにシフト
・全分野でのエネルギー効率改善を強力に進める
・建築物の断熱・省エネの義務づけ
・電力の自由化、送電の自由化を推進する
・エネルギーの地産地消「コミュニティーパワー」の推進
・エネルギーの自給自足「オフグリット」を推進
・生活の方向や質を根本的に見直す(価値観の転換、ライフスタイルの転換)