5分でわかる環境問題

5分でわかる水資源の危機

◆世界の水はたったこれだけ

地球は水の惑星といわれていますが、飲み水として利用できる水はどのくらいあるのでしょうか。
実は98%が海水で、淡水は2%、その大部分は南極や北極の氷山などで、私たち陸上生物が利用できる水は全体の0.01%にも満たないのです。
地球上の水すべてが風呂桶一杯の水だったとすると、私たちが使える水はわずかに一滴。
この一滴の水をすべての陸上生物が分かち合って生きているのです。
この水が枯渇したり汚染されると、すべての生物が絶滅してしまうのです。


◆水危機の現状

現在、世界の約7億人が、水不足の状況で生活しています。
不衛生な水しか得られないために毎日4900人(年間約180万人)の子どもたちが亡くなっています。(国連水資源報告書,人間開発報告書)

水不足の地域では、干ばつや地下水の減少、湖沼が小さくなるなど、食糧を作るための農業用水や飲み水さえ十分に得られなくなっています。

・黄河

中国第2の大河の取水が増えたために、1年の半分以上は河口まで水が流れなくなり、流域の人々が飲料水にも困り、工場の操業停止、公衆浴場、公衆便所も使えなくなった。

・アラル海

世界第4の湖(びわ湖の100倍)が近代農業(綿の栽培、灌漑農業)のために水量が激減。
面積は半分、水量は1/3、塩分濃度が上がり、漁獲量がゼロになってしまった。干上がった湖底の塩分が風で周囲に飛散し、塩害で農業は壊滅的打撃を受けている。


◆水不足から食糧危機を招く

小麦などの穀物の栽培には大量の水が必要です。
1キログラムの穀物の生産にはその1000倍以上、つまり1トン以上の水が必要です。
水不足になることは食糧の不足へとつながるのです。

特に人口増加に伴って、食糧を増産する必要が出てきたため、これまで農地にしていなかった乾燥地帯で灌漑農業が行われるようになりました。
このことにより、さらに大量の水が必要となりました。
黄河やアラル海が干上がった原因は、大規模な灌漑農業を行うために、上流域で大量の水を河川から汲み出したため引き起こされたのです。

アメリカやインドでは地下水が枯れて農業用水が十分に得られなくなり、農地が減り始めています。
世界の食糧生産の4割以上を支えている灌漑農業は、その生産量を維持することが難しくなっています。
このままでは大規模な食糧不足は避けられないのです。


◆水をめぐって国際紛争も

いくつかの国際河川(国境をまたがる河川)では、河川の水量よりも上流での水需要が多くなり、下流で水が枯渇し始めたことによる国家間の紛争さえ起きています。
こうした地域は今後、人口が増加するにつれてさらに増えると予測されています。


世界の水紛争

  • すでに紛争が起きた地域
    • リオグランデ川 ( アメリカとメキシコ)
    • インダス川 (インドとパキスタン) など
  • 今後紛争が予測される地域
    • ナイル川( エジプト、エチオピアなど)
    • ガンジス川 (インド、ネパールなど)
    • チグリス・ユーフラテス川
      (トルコ、シリア、イラク)など


◆水不足の原因は?

どうしてこのような水不足がおきているのでしょうか?

私たちの豊かな生活を支えるために水の使用量が急増したことが、最も大きな要因なのです。

特に食糧を増産する為の水消費は50年前に比べて3倍増加しています。

さらに途上国での工業化や生活の物質的な向上によって、水需要全体も50年前の3倍になっています。人口増加の2倍の割合で水消費が増えているのです。

世界の取水量の推移


◆今後の予測

2050年に人口は90億人になると言われています。食糧生産や途上国の経済発展に伴ってますます水需要が増加します。
さらに温暖化により、世界各地の雨の降り方も大きく変化し、乾燥化が進むところや洪水により、かえって飲み水などが不足する地域も出てくるのです。
2025年には世界人口の2/3が水不足になると予測されています。(第4次地球環境概況など)


◆世界から水をかき集める日本!

こうした水不足を引き起こしている原因の大部分は、アメリカやEU、日本などの先進国の水の大量消費 です。
近年では、インドなどの発展途上国が近代化したことも原因に含まれます(下グラフ)

さらに大きな問題として、輸入に頼っている日本は、その生産に必要な水を間接的に消費していることになります。(これを仮想水と呼びます)

日本が輸入している大豆や小麦は100億トン、牛肉は150億トンの仮想水を輸入しているのと同じなのです。
日本の輸入品(農産物や工業製品)のために使われている仮想水は全部で約 800億トンになり、日本の水使用量全体(約830億トン)とほぼ同じ量の水を海外で消費していることになります。

例えば、輸入された米、輸入された牛肉で作られた牛丼を一杯食べるということは、海外で使われた数トンの水を消費していることと同じです。

私たちの普通の生活のために、想像以上に途上国の生活を破壊しているのです。

各国の水資源消費(一日一人あたり)


◆できることからはじめよう

水は私たちが生きていく上で欠かすことができません。
水が豊富な日本では、昔は自然が浄化できる範囲の活動でしたが、今はその範囲を超えてしまっています。
私たち一人ひとりが水の使い方を見直すことが必要です。

・水の危機(水を汚染し、ムダ使いしているのが自分であること)を知ること
・徹底した節水、4R(やめる、減らす、再使用)が基本
 *風呂、洗たく、水洗トイレ、洗面、炊事、洗車、庭の水まき など
・できるだけ国産品を利用する(仮想水を減らすことにつながる)
・台所などから油などを流さない(生活排水は海へと流れていく)


◎地球環境ファミリーシリーズ『地球は今』第7巻 『不足する水資源』

※現在通販サイト「EcoShop」では取り扱っていません。ご購入を希望の方はAmazonなどでお探しください。

東日本大震災での原発事故による水汚染が深刻化しています。
地球レベルの大きな問題です。

放射性廃棄物(使用済み核燃料)による海洋汚染も、大きな問題です。
世界のどの国も核燃料の最終処分について見通しがありません。
原子力発電により、2000年までにドラム缶100万本もの放射性廃棄物が発生。
その処理方法は確立していません。
いったん核のゴミが海に捨てられると、何世紀にもわたって影響を及ぼします。
私たちが使用する電気の量を3割減らすことができれば、全ての原子力発電所を停止することができます。
私たちの生活を見直す時がきているのではないでしょうか。

命の源の水資源の枯渇や汚染は、放射能物質、ごみ、大気汚染などの原因によって、世界中で深刻化しています。
ダムの建設は実は逆効果なのです。
ダムの建設によって森林を伐採・大雨による土砂崩れが増加します。
わかりやすく説明します。

ファミリーシリーズ『地球は今』⑦不足する『水資源』p52~53より抜粋


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