地球は今

【地球は今…】北方領土問題について

2月7日は「北方領土の日」。今回は、北方領土問題についてまとめました。

(落合真弓)


●北方領土とは

歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)、国後(くなしり)、択捉(えとろふ)の四島。
総面積は約5000km2で、千葉県とほぼ同じ。
根室半島と最も近い歯舞の距離は7km。もともと土地続きだったが陥没によって離島となった。

●北方領土問題とは

戦前は日本人1万7000人が居住し、漁業、林業、鉱業、畜産業を営んでいた。
終戦直後の8月28日突然ソ連軍が侵攻、日本人を追い出し、実効支配。現在はロシア人1万7000人が住んでいる。

★日本政府は返還を要求
★戦後70年たった現在、まだ平和条約が締結できていない。
★このことが、多くの分野、多くの問題の障害になっている。

かつて北海道は、大陸から渡ってきた新日本人が、先住民(蝦夷、アイヌ)を虐殺、土地を奪い、奴隷のように働かせた。 明治時代には、「旧土人保護法」という法律の名のもとに、 1.土地の没収 2.漁業・狩猟の禁止 3.アイヌ固有の文化の禁止 4.日本語の使用 5.改名と戸籍編入など、悪名高いオーストラリアの『白豪主義』と同じことを強制した。 平成9年、同法律が廃止されるまで、アイヌは厳しく差別された。(二風谷ダム事件等)

●北方領土の歴史

1855 日魯通好条約(下田条約 2/7) 日本とロシアの国境を択捉島とウルップ島の間に決定。樺太島は国境を設けず
1875 樺太千島交換条約(5/7) 樺太全島とウルップ島以北の千島列島を交換
1904 日露戦争が勃発(2/8~) 日本が勝利
1905 ポーツマス条約(日露講和条約)(9/4) 南樺太を日本の領土に
1941 日ソ中立条約(4/13) 有事の際は中立。侵略行為は行わない約束
1945 ソ連が宣戦布告(8/8) ソ連はヤルタ協定に基づき日ソ中立条約破棄
「ポツダム宣言」を受諾(8/14) 太平洋戦争終結(8/15)
ソ連が北方四島に侵攻(8/28)
「北方領土」を占領(~9/5)
日本人は引き揚げ、替わってソ連人が移住し、ソ連が実効支配
1951 サンフランシスコ平和条約(9/8) 日本は南樺太と千島列島を放棄
(千島列島に択捉島と国後島も含まれるかどうか議論が分かれている)
1956 日ソ共同宣言(10/19)
(鳩山首相・ブルガーニン首相)
日ソの国交が回復。平和条約締結後に歯舞群島、色丹島を日本に引き渡すことに同意
1991 日ソ共同声明(4/18)
(海部首相・ゴルバチョフ大統領)
北方四島の帰属が平和条約において解決されるべき事案と初めて文書により確認

その後も橋本首相、森首相、小泉首相、安倍首相と交渉はされるが、四島の返還はない。

●日本とロシアの主張

★日本

  • ソ連が日ソ中立条約を一方的に破り、不法占拠した。
  • 歴史的権利から、「四島とも返還されるべき」と主張。
  • しかし、最近の世論調査で「四島返還は無理」と言う声が多数になってきている。

※返還が進まなかった背景には、アメリカから日本への圧力(四島返還でないと承認しない)等があり、ソ連、ロシアが硬化する経緯があった。

★ロシア

  • ソ日本が日ソ中立条約を先に破った。
  • 第二次世界大戦で北方領土は合法的に自国領になった。
  • 日ソ共同宣言では、二島を「平和条約締結後に」返還すると明記しているが、プーチン大統領側は「日本が四島返還にこだわり、これを無効にした」と主張。
日本の主権下では、日米安保条約により、米国は日本のどこにでも基地を置く事ができる。 2016年11月に谷内国家安全保障局長がロシアに行った時、 「歯舞、色丹が引き渡されたら、米軍基地を置く可能性はあるか」と問われ、 「ある」と答えたことで、返還に急ブレーキがかかったとの見方が有力である。 ロシアは、返還しないか、返還しても「主権」は認めない公算が大きい。

●北方領土問題の裏の利害

★日本

  • 天然ガスの輸入コストが下がるなど、経済メリットが大きい。
  • 安倍政権の成果、アベノミクスの成果と宣伝できる。
  • 尖閣諸島や竹島の領土問題解決のはずみになる。
  • 中国に対して圧力になる。

★ロシア

  • 天然ガスの輸出、日本の経済的協力など経済メリットが大きい。
  • 中国に対して圧力になる。

●安倍首相・プーチン大統領会談(2016年12月15日山口県・16日東京)

★プーチン大統領の政治力、外交手腕に圧倒された。

★経済協力のみ進展。領土問題や平和条約は進展なし。

  • 日本はロシアに3000億円の経済協力を行う。
  • 日本は様々な分野で経済協力することを約束
  • 経済協力、島の共同開発はすべてロシアの法律下で行う。

●今後どうすればいいか

★北方領土返還要求は、既に住んでいるロシア人の不幸を招くだけなのでやめる。
★日露間でビザ相互免除協定を導入する。
★地域間の人的交流を拡大する。
★信頼関係を築き、日露平和条約を締結する。

●私たちにできること

★事実を知ること
★自国だけではなく、両国の平和、人権を守る
★日米の関係を見直し、自立国家であるための主権確立に取り組む