【地球は今…】パリ協定とその後
パリ協定が締結されて約 1年半、世界はどのようにパリ協定の約束を守ろうとしているのか、その後の動きを追ってみた。
(落合真弓)
●パリ協定(2015年 12月採択)の概要
- 全ての国による長期目標の実現に向けた温暖化対策協定
- 世界の長期目標
・気温 :産業革命前からの平均気温上昇を 2℃未満に抑える。
さらに、1.5℃以下にとどめる努力目標を掲げた
・排出量:できるだけ早く減少させる
今世紀後半には、人間の活動による温室効果ガス排出を正味ゼロにする - 資金・・・・先進国が拠出するが、新興国等にも拠出を奨励
将来、発展途上国において、温暖化対策に必要な資金は、1122憶ドル
※2016年の世界の軍事費総額(1兆 6866億ドル)の 10分の 1で足りる
●主要国の約束草案(INDCs)
国 / 地域名 | 温室効果ガス 排出量の削減率 |
目標年 | 基準年・基準 |
日本 | - 26%( - 18%) | 2030年 | 2013年(1990年) |
EU | - 40% | 2030年 | 1990年 |
米国 | - 26 ~ - 28% | 2030年 | 2005年 |
ロシア | - 25 ~ - 30% | 2030年 | 1990年 |
カナダ | - 30% | 2030年 | 2005年 |
中国 | - 60 ~ - 65% | 2030年前後 | 2005年・GDP当たりCO2排出量 |
ブラジル | - 37%( - 43%) | 2025年(2030年) | 2005年 |
●約束草案は提出されたが・・・
- 世界の排出量の約 95%を占める 188ヵ国が提出(2015年 12月)
- 全ての国が約束を達成したとしても、「2℃未満」の目標達成はできない
- 日本の目標に対して、ドイツの研究機関連合体の評価は「不十分」
- 先進国は 2050年までに(現状に比べ)80%削減を約束しているが大丈夫か?
- CO2排出量世界第 2位の(15.8%)のアメリカのトランプ大統領はパリ協定からの離脱を表明。
途上国への温暖化対策支援金約 3300億円の拠出も白紙に戻すと発言 - 「重大な結果をもたらす致命的な過ち」と世界中が抗議の意思を示した
●温暖化の影響:平均気温が 2℃上昇すると
- 氷床融解・海面上昇のリスクがさらに高くなる
- 生物多様性の損失(珊瑚礁の白化、寒帯の生態系の崩壊など)
- 農作物の収穫、水資源量の減少
- 世界的な異常気象(洪水、干ばつ、大火災など)、生活に大打撃
●世界は国も企業も革新的な大転換を始めている
- 2014年、世界のエネルギーの 23%が再生可能エネルギーに
- 2016年、風力と太陽光発電で 8億KWに(原発の約 2倍)
- エネルギー企業も「脱石炭」、再エネ、天然ガスにシフト
- 「何もしないことは、事業継続のリスク」と捉え
・目標(2℃未満)に合致する自社目標を宣言する企業が 100社以上
・電力の 100%再エネ化を宣言している企業が 50社以上 - トランプ米大統領はパリ協定からの離脱を表明したが、米企業や知事も反発
ニューヨーク州、カリフォルニア州、ワシントン州は連合を結成し、パリ協定を支持、独自に地球温暖化対策に取り組むと発表 - スウェーデン年金基金などは投資先の組み合わせを脱炭素化企業に などなど
●日本は政府も企業も動きが鈍い
安倍政権下で決定された目標値の背景となる 2030年の電源構成は、
原子力 20 ~ 22%、再生可能エネルギー 22 ~ 24%、石炭 26%、天然ガス 27%、石油 3%
★問題点
- 省エネ、再エネの見込みが小さすぎること
- 原子力発電 20 ~ 22%は非現実的な想定 ⇒ 国民は脱原発を望んでいる!
- 石炭火力を現状より増やして 26%とすることはCO2排出量を考慮すると過大
●あるべき国家ビジョンと戦略
再生可能エネルギーへの大転換
- 100%エネルギー永続可能地帯:71市町村、100%電力永続地帯:111市町村
- 必要なエネルギーと食糧を地域で自給できる永続地帯:39市町村
(『永続地帯 2016年度版報告書』より)
こうした取り組みを強力に推進する。補助する。奨励する。
●私たちにできること
★省エネ、スローライフに向けて大きく見直し
★農的生活、エネルギー自給生活