地球は今

【地球は今…】日本の学力、研究力

日本の学力と研究力の現状を調べてみた。
大学の世界ランキング、論文引用数などをドイツやアメリカと比較し、日本の低下の原因、どうすればいいかをまとめてみた。

(落合真弓)

●世界大学ランキング・・・日本は順位がどんどん落ちている

日本の現状 2013年 2017年
 アジアにおける順位    1位日本(以下 4ヵ国:シンガポール、香港、中国、韓国)   4位日本(上位 3ヵ国:シンガポール、中国、香港) 
 200位以内の大学数   5 校:東大、京大、東工大、東北大、阪大  2 校:東大、京大

※教育力、研究力、研究の影響力(論文の引用数)、国際性、産業界からの収入の 5領域、
13項目について総合力を評価、分析し、ランキング化している。(The World University Rankingより)

★研究力の国際競争力は質・量ともに低下(人口あたりの論文数は 35位・2013年)

●その理由

★科学雑誌「ネイチャー」も異例の警鐘

  • 日本の科学技術力が 14分野中 11分野で大きく低下していると指摘
  • その原因は政府の研究投資停滞にあると指摘
  • 予算削減で日本の科学者たちの間で不満が広がっている

★人件費削減、研究者削減、研究費削減

  • 理化学研究所の運営費交付金は、710憶円(2005年)⇒ 450億円(2016年)
  • 特に若い人材が減少
  • 研究の実用、評価は 20 ~ 30年先。短期的成果が期待されないため衰退の危機

★安倍首相の 2014年 5月 OECD(経済協力開発機構)の基調演説
「理論的な学術研究を深めるのではなく、社会のニーズを見据えた、実践的な職業教育を行う。」

●日本とアメリカの比較

★日本では、「大学の基礎研究はすぐには使えない。製品化につながるものを研究してほしい」という企業の声を重視

★アメリカでは、企業は応用・開発研究に集中し、基礎的な部分については大学での研究の知見を活用する産学の連携がなされている

★大学の基礎研究の割合 アメリカ 1975年 63.7% ⇒ 2005年 71.4%
             日本   〃  72.4% ⇒  〃  55.1%

●日本とドイツの比較

★ドイツのメルケル首相は安倍首相とは真逆
「すぐ役立つ応用研究ではなく基礎研究を深めるべき」
 ⇒ここ数年、学力・研究力は飛躍的に向上

★世界大学ランキングトップ 200(2017年)⇒ 日本 2校、ドイツ 20校

★引用論文ランキング  日本  2004年 4位 ⇒ 2014年 10位
            ドイツ  〃  3位 ⇒  〃  4位

★ノーベル賞受賞者数(2017年)⇒ 日本 6位( 23名 )、ドイツ 3位( 82名 )

★2015年ノーベル受賞者・梶田隆章所長(東大宇宙研究所)
 「基礎研究は崖っぷち」「日本は大学の研究予算を減らし、世界に逆行」「日本のノーベル受賞の研究は 20年、30年前のものが主流」

●OECD 加盟国の公教育支出のGDPに占める割合(%)

●日本の教育の問題点

本来、アカデミー(学問や研究)は商売やビジネスとは無縁
それをどう応用するかは、企業の研究所や研究者の仕事なのだが...

★文系の学問は「役に立たない」と断じ、人類共通の知的財産の基礎科学は軽視

★高等教育機関への公的研究資金、研究従事者数は先進国中最も少ない

  • 「効率化」のもと、国の予算は年々縮小、2004年から 1470億円( 12% )減り、2016年予算は 1兆 945億円

★試験で高得点を取るテクニックばかりを重視

★子どもでさえ、「この学問は何に役立つか」と目先の利益の「成果」が判断基準

★研究者の素養として重要な、深く考える力が育ちにくい

●日本はどうすればいいか

★基礎研究から実践的な職業教育にシフトすることは大きな間違い

★基礎研究は 20年、30年後の科学技術を支えるものでその投資は重要

★科学について無知な官僚が科学政策を担っていることも大きな問題

★熊本大学・山村研一シニア教授「最近の政治家は理念がない。」

未来に目を向けよう! 目先のビジネスより、将来の安心を!