環境情報

【地球は今…】日本の森林と林業

豪雨被害を報じるテレビで多くの流木が被害を拡大しているのを見た。今、森林はどうなっているのだろう。日本の森林と林業について調べてみた。(高木善之・落合眞弓)

●日本の森林の現状

★日本は世界有数の森林大国
  • 日本は国土の3分の2が森林(森林率68.5%)
  • フィンランド(73.1%)、スウェーデン(68.4%)についで世界3位の森林国
  • 世界の平均森林率は30.6%(2015年)
  • 日本の森林2508万haのうち、天然林は1479万ha、人工林は1029万ha
  • 日本では過去40年間森林面積の大きな増減はないが、天然林は15%減り、人工林は30%増えた
  • 終戦直後や高度経済成長期に伐採跡地に造林され、その主要樹種は、スギが44%、ヒノキが25%、カラマツが10%
  • 戦後に植林した人工林の半数以上が46~50年以上となった
  • 山村は過疎化・高齢化が進行し、間伐など整備がされず森林の荒廃が見られる
  • 近年の大雨などでは、根ごと流されて流木災害や土砂災害が頻発
  • 地球温暖化で豪雨や台風は激しくなる一方、人工林は人手(間伐など)をかけないと森全体が弱くなり、  保水力や土壌保全力が低下し、山崩れなどが頻繁に起こる。日本の山林は危機的状態だ
《健全な森林の多面的恩恵》
天然林には豊かな森の恵みがある。その恩恵は、人が生きていくために必要なものが揃っている。
・木材、キノコや山菜、薬草、木炭などを採取、生産
・土砂災害を防ぎ、土壌保全
・水を蓄え、美味しい水を供給する天然のダム
・地球の肺(酸素を作る)
・地球温暖化防止効果
・土を作りミネラルを川から海に供給し、漁場を豊かにする
・美しい景観、保養と癒し効果

●日本の林業の現状

★林業の弱体化
  • 林業者は農業者と同じく小規模・零細が多い(50ha未満が74%)
  • 所有者が不明で管理できない森林がある
  • 採算性が悪いので、事業縮小や廃業する森林所有者もいる急峻で複雑な地形のため、  林道・森林作業道が未整備で伐採搬出コストが高い  樹齢40年の杉1本の立木価格は684円(1980年が立木価格のピークで5976円)
  • 林業就業者の減少と高齢化(65歳以上の就業者)

★木材は安ければいいか

  • 日本の木材自給率は1955年は94.5%だったが、安い外国産木材を求めて、60年代はフィリピン、70年代はインドネシアの熱帯雨林を大量伐採・輸入し、相手国の森林破壊と洪水や土砂崩れの被害を与えた。  現在は米国、カナダ、マレーシア、オーストラリア、チリから大量輸入。木材自給率は33%にまで下がっている。
  • ドイツなどは農業も林業も、自給率は100%。政策に大差がある。

●林業に未来はあるか

★「森林経営法」
  • 2019年4月に施行される「新たな森林管理システム」(2018年5月に可決)
  • 林業の成長産業化・・・市町村が、森林経営を意欲の低い小規模零細な森林所有者から意欲と力のある林業経営者に集積・集約化する
  • 森林の適切な管理・・・所有者不明や経営的に成り立たない森林の経営管理を市町村が行う

★「森林経営法」の問題点

  • 大型木材産業とバイオマス発電施設への原木の安価な大量安定供給が目的
  • 伐採に同意しなくてもプロセスを経れば「同意したもの」とみなす非常に強権的な内容で、憲法が保障する財産権を侵害している可能性が高い
  • 国会の背景説明資料に「データねつ造ではないか」「恣意的表現だ」との批判
安倍政権はあいつぐ失態をごまかすために、短期的成果を求めようとしている。 林業は農業と同じく、目先の価格や売上を追求してはならない。山林に関わる人たちとしっかりと向き合い、話し合って持続可能な地域共存型の林業をめざすべきだ。

●健全な森林にするために

  • 短期的な木材増産のための皆伐や過間伐、再造林に多くの補助金を使うよりも、個人の小さな森林所有者へ平等に支援(高知県土木部総合評価方式)  ⇒林業従事者も増え、長期的な木材増産も可能になる
  • 家を建てるなら100年、200年住み続けられる国産木材の家にしよう!