環境情報

【地球は今…】暮らしとプラスチックの問題

プラスチックは私たちの暮らしのいろいろな場面で便利に使用されている反面、深刻な問題も起きている。今回は暮らしを振り返り、問題の解決法を考えてみる。(高木善之・落合眞弓)

●プラスチックの特性とその種類

プラスチックは私たちの生活の中のあらゆる場面に使われていて、プラスチックが使われていない場面はないと言っても過言ではない。
★プラスチックの特性と主な種類

 プラスチックの名称 品物 性質
 ポリスチレン(PS) トレイ、発泡スチロール、カップ麺  軽い、断熱、防湿効果 
 ポリプロピレン(PP) 密閉容器 半透明、耐熱性
 ポリエチレン(PE) レジ袋、バケツ、ふた、ラップ 油や薬品に強い
 PET ペットボトル、プラカップ 透明で圧力に強い
 ABS樹脂 家電製品の外箱 軽く、衝撃に強い
 ポリ塩化ビニル(PVC)  消しゴム、ホース、雨どい 柔軟性、燃えにくい
 FRP ヘルメット 衝撃に強い
※消しゴムも元はゴムだったが、今はプラスチックが使われている。


●世界のプラスチック生産量

★プラスチックの総生産量(化学繊維も含めて)
 1950年 200万トン ⇒ 2015年 3億 8000万トン(200倍)
★1950年から 65年間の生産量の累計は 83億トン
 最近の 13年間で生産量は約半量と急増中
★急増しているのはアジアの国々、中国は世界の 1/4を生産
 中国 7800万トン(2015年)、EU約 6000万トン(2016年)、
 アメリカ 5100万トン(2017年)、日本 1450万トン(2016年)
★42%は包装材(緩衝材,食料品の容器,飲料ボトルなど)

●プラスチックの問題点

  • 大量生産・大量消費・大量廃棄により、原料の石油資源の枯渇、ごみ問題、さらにマイクロプラスチック、環境ホルモンなどの問題がある。
  • 安定な物質なので自然分解には 100年から 1000年かかる
先進国のプラごみは国境を超え輸出され、途上国の環境を汚染していた。しかし、中国が昨年 12月プラごみの輸入を禁止した「中国ショック」により、プラスチックの削減は待ったなしだ。EUや英国の政府と企業はレジ袋やストローなどの削減に取り組んでいる。

1.世界のプラスチックごみ問題

  • これまでの生産量 83億トンのうち、90%以上がごみになっている 内訳:リサイクル 9%、焼却 12%、埋立地や海洋投棄、79%
  • 2050年までに 120億トンのプラごみが埋め立て処分か、自然環境に投棄されると考えられる
  • リサイクルは、処理やエネルギーコスト、環境負荷がかかる
  • 日本は、ペットボトル 227億本中 25億本以上が未回収(2016年) 回収しても、ドイツやデンマークのように洗浄して繰り返し再使用することはない

2.マイクロプラスチック

(5ミリ以下の粒子)
  • 毎年 1270万トンものプラスチックが世界中の海に流入
  •  ・その 33%は飲料系のごみ  ・化学繊維の服も洗濯で繊維状になり下水から海へ
  • プラスチックは、長時間直射日光や雨風などで経年変化が起きる
  •  ・プラスチックの内部から有害な物質が浸み出す  ・プラスチックそのものが有害な物質に変化
  • マイクロプラスチックを魚や貝が食べ、それを人間が食べる
  • 最近は、塩やはちみつ、ビールなどにも混入の報告
  • マイクロプラスチックは様々な生態系に忍び込んで生命を脅かす存在になっている
  • 海に蓄積するプラごみの量は 2050年には魚の量を超えると予測されている
  • 日本の海域に漂うマイクロプラスチックは世界平均の約 27倍
2018年 6月に開催されたG7首脳会議では、日本と米国だけが「G7海洋プラスチック憲章」に署名せず、海のプラスチック汚染問題に背を向けた。

3.環境ホルモン

  • シーア・コルボーン博士らが著書「奪われし未来」で、「特定の化学物質が動物の生殖能力の低下(精子の減少)や、オスのメス化、メスのオス化を招く」と警告
  • プラスチックとその添加剤(可塑剤や難燃剤など)のビスフェノールA、フタル酸エステル類やプラスチックを燃やすと出るダイオキシンなどが環境ホルモンとされる
  • その他にも、特定の化学物質は催奇性(奇形を起こす)や神経を撹乱するなどの作用を起こす可能性があり重大な問題とされている

●私たちにできること

  • プラスチックが有害物質であることを認識すること
  • プラスチックを使わないように意識すること
  • プラスチック使用を減らす制度(回収、レジ袋の有料化など)に協力する