【地球は今…】日本の農業とタネ
農業は私たちの命を支える大切なものだ。しかし政府はTPPや種子法の廃止など農家や国民を苦しめる法律を強行している。今回は、日本の農業、種子をまとめた。(高木善之・落合眞弓)
●日本の農業の現状
★日本の食料自給率(カロリーベース)は主要国で最下位 39%
カナダ 258%、フランス 129%、アメリカ 127%、イギリス 72%
★農業人口の減少。60年間で 1454万人から 145万へ激減(2018年)
★農業従事者の高齢化。65歳以上の割合は 7割、49歳以下は 1割
★農地の減少。50年間で 600万haから 450万haへ減少した(2015年)
★米国の圧力(貿易摩擦)で安い農産品が輸入されるようになった●日本の農業の課題
上記の問題は日本政府の長年の農業政策の失敗が原因だが、さらに追い打ちをかけるように、政府はTPP推進、米国とはFTAそのものの貿易交渉を開始。それだけではない。「規制緩和」、「民営化」、「自由貿易」の名の下に、「種子法廃止」で日本の公共種子事業をやめさせ、「農業競争力支援化法」で「生産資材価格を低減させる」という大義名分で、国と県がつくった種子の情報を企業に譲渡させ、「種苗法改定」で自家採種を禁止。実態は、この 3点セットで世界の大企業の「種子の独占」を推進し、日本の農業をつぶすことだ。
★種子法(「主要農作物種子法」)の廃止
主食(コメ、麦、大豆など)の種子を安定供給するために、国が補助金を投入して優良な種子を守るための法律「種子法」を制定(1952年 5月)し、多額の税金と膨大な歳月と手間をかけて良質な種子を育成し、安価で農家に提供してきた。
しかし、日本政府は「種子法は民間の品種開発意欲を阻害している」という口実で、日本の農業や日本の食を支えてきた法律をわずか半年の審議で 2018年 4月廃止した。
その結果、
- 育種予算が無くなり、安定供給ができなくなる
- 種子がグローバル企業(多国籍の大企業)に独占され、価格が高騰する
- モンサント社などが参入すれば、遺伝子組み換え農作物が大量に入ってくる
- 日本人の健康や食の安全をおびやかす可能性が高い
★種苗法改定の問題
新品種の保護のための品種登録に関する制度で、新品種を開発・育成した人の権利を守るため、開発者の許可なく品種の増殖、販売は禁じられている「種苗法」を改定する法案を夏の参議院選挙後に提出する用意があるという。改定されると
- 農家の自家採取を原則禁止に
- 農家が代々自家採種した種でも栽培するためには品種登録しなければならない
- 今後、農家はすべての種子を企業から買わなければならなくなる
●種子を取り巻く世界の情勢
以前は農家が何世代もかけて改良し、その土地に適した多種多様な種を作りあげていた。しかし、1960年代の高度経済成長期には、大量生産、単一栽培(モノカルチャー)が拡大し、儲かる種子だけが栽培され、94%の種子が失われ、伝統的な農業は急速に破壊された。一方、種苗会社は統廃合を繰り返し、いまや世界の 5大企業が種子の 75%を所有している。それらの企業は遺伝子組換え(GM)技術と特許によって種子を独占し、世界の食を支配しようとしている。また、GM作物は人々の健康と生態系を脅かしている。さらに大きな問題はF1種問題だ。
★F1種(第1世代の種子)問題
企業が販売する種子のほとんどはF1種、つまり遺伝子組換えなどで作られた人工種子であり、1世代目は期待される作物が出来るが、その種子(2世代目)は期待される作物ができない。いわば「種無しブドウ」のように、種子は毎回企業から農薬や化学肥料などとセットで買わないといけない。F1種問題は経済的な問題だけではなく、そもそもそういう農作物は本当に安全なのだろうか。
私たちが着ている綿のシャツ、その生産地インドの綿花農業は、今や 95%がGMになり、種の値段は 80倍になった。GM作物を栽培する農家は毎年、F1だから種子と農薬をセットでモンサント社等の供給元から買わなければならない。そのため貧しい農民は借金をし、債務に苦しめられ、自殺する農家は 2002年から 10年間で 17万人に上るとされている。 |
●これに対抗する運動「シード・フリーダム」
★大自然の恵みである種子が世代を超えて生き続ける自由
★農民が種子を保存し、まく自由
★私たちが何を食べているのかを知り、遺伝子組換えを拒む自由
これらの自由を守るためにインドの環境活動家ヴァンダナ・シヴァさんが提唱している運動で、世界中に広がっている。 映画『いのちの種を抱きしめて』参考