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【地球は今…】ひきこもり

ひきこもりが原因で起こった悲惨な事件が相次いでいる。その本当の原因は何だろう。
今回はその根本原因、複雑な事情を探ってみた。(高木善之・落合眞弓)

●ひきこもりとは

★自宅にひきこもり、社会とコミュニケーションがなく、多くの場合、家族ともほとんどコミュニケーションがない状態。それが 6ヵ月以上続いている。

●ひきこもりの実態

★1980 年代~ 90年代は、「不登校の子ども」として社会問題化
★2000 年代にかけて「ひきこもり」としてクローズアップ
★現在は長期化・高齢化が深刻化

  • 若年層( 15歳から 39歳)のひきこもり 54万 1千人
  • 中高年層(40歳から 64歳)のひきこもり 61万 3千人
  • ひきこもり期間が 3年から 5年は 21%、5年以上は半数以上
  • ひきこもりの 77%が男性。100万人以上存在するのは日本だけ

★自室から出ないひきこもりは 10%。家から出ないひきこもりは 17%
 コンビニなどへの外出が可能なひきこもりは 71%
★ふつうの家庭で起きてしまう
★厚生労働省の報告では「ひきこもりの 95%は精神障害と診断できる」とあるが、そうではなく、ひきこもりの結果、        心を病むなどの精神障害が生じると考えられる。

●ひきこもりになったきっかけ

★子どもの場合 いじめや勉強、対人関係などで不登校が始まり、それが長く続く
★大人の場合 職場、仕事、いじめ、人間関係、病気、親の介護などで退職

●ひきこもりの症状と二次的な問題

★多くは人間関係の失敗で対人恐怖症
★「学校に行かないとダメ」「働かないとダメ」というプレッシャー
★うつや不眠、摂食障害、心身症状、自殺願望などの精神症状を引き起こす
★家庭内暴力、将来を悲観した自殺、無理心中、子殺しのリスクも
★個人、家族、社会と接点がないと、悪循環を生み、悪化、長期化する

●ひきこもりと事件

★長期ひきこもりの娘が、母と共に栄養失調による衰弱死しているのが見つかった
★ひきこもりが長期化、高齢化。親子とも経済的、社会的に孤立。「8050 問題」
★川崎市でスクールバスを待つ児童らが次々と殺傷された事件の容疑者はひきこもり傾向にあった。
   その 4日後、ひきこもりがちで家庭内暴力の長男を、同様の事件を起こすのではないかと不安になり、
   父親が殺害した痛ましい事件があった
★「ひきこもりは犯罪者予備軍」との“偏見”や“言説”で誤解が蔓延
★ひきこもりの犯罪率は 0.7%で、日本全体の犯罪率 1.4%よりむしろ低い

●根本原因

* 1世帯の人数は、戦前の 10人⇒ 1960年代の 5人⇒現在 2.5人と減り、
 核家族化世帯数は、戦前の 500万世帯⇒ 1960年代の 1千万世帯⇒現在の 5千万世帯に

*テレビひとつとっても、近所で 1台⇒家族に 1台⇒ 部屋に 1台に。家電も 10倍に

*GDPも 1960年代の 50兆円から現在の 500兆円に 10倍増加

*豊かになったようだが、近所付き合いや家庭内の人間関係は希薄になり、祖父母やご近所さんなどに相談する環境を失い、
  孤立化し、子育てが分からない、家庭内の問題解決ができない親たちが増えた

*その結果、子どもは、本当はやりたくないことも感情を抑えて無理をしてやらされる
  それが続くと、自己肯定感がなくなり、うまく自己主張できなくなる

*競争社会では、失敗は認められず、「自己責任」の空気が蔓延
  いじめなどの人権侵害や暴力、暮らしの不安や格差、分断などの問題と広がる
  傷つけられ、壊されてしまうという危機感を持ち防衛本能がひきこもらせる

*職場では、非正規や派遣の数が増大し、職場環境はブラック化
  一度レールから外れるとなかなか戻れない社会の構造がひきこもりの長期化に

*これらの社会問題を解決するのは政府や国会の重要な役割だが、長い間放置

*「力の支配」に国民はあきらめモードになり問題は残ったまま
  ついには、問題が大きくなり、事件化

●解決には、やさしさ、包容力、そして判断が必要

★慎むべきは、「いい悪い」を決めつけること、質問攻め、叱ること、説得すること
★基本は状況の理解、把握、判断
*ひきこもりを「悪いこと、いけないこと」と責めない、決めつけない
*本人のつらい気持ちを理解し受け止める
*あわてず、焦らず、じっくりと話を聞くこと
*黙って聞くこと、受け止めることで信頼感や安心感が生まれる
*信頼や安心が生まれると、本人は原因や次のステップを話すようになる
*急がずに、「本当にそう思う?」「本当にそうしたい?」と考える時間を与える
*学校や職場、行政、警察などの相談が必要な場合は連絡をする