【地球は今…】地球温暖化(その3)
「地球温暖化を止めよう!」と世界的な運動が始まっている。今回は日本の温暖化対策の現状。そして世界の食料の現状を省みて、解決方法を探ってみる。(高木善之、落合眞弓)
●日本の温室効果ガス排出量は改善
*2018年度の温室効果ガスの総排出量は、12億 4400万トン。(温室効果ガスには
メタン、フロンなど様々あるが、大部分はCO2で 11億 3900万トン)
*2011年の原発事故を受けて、省エネ、再生可能エネルギーの利用も進み、
温室効果ガスの排出は 2014年度以降 5年連続で減少
*再エネは 2010年度と比べ 63%増え、電源構成比も 9%から 17%に増えている
*しかし、日本の削減目標は、1990年比 18%減と低い(EUの目標は 40%削減)
*石炭火力を推進する日本は、海外のNGOから不名誉な「化石賞」を受賞
●部門別CO2排出量 直接排出と間接排出の大きな違い
エネルギー | 産業 | 運輸 | その他業務 | 家庭 | その他 | |
直接排出量 間接排出量 |
40.0% 8.0% |
25.1% 34.8% |
17.8% 18.5% |
5.5% 17.3% |
4.6% 14.6% |
6.9% 7.0% |
*直接排出量ではエネルギー転換部門は発電などのCO2排出量をすべて含むが、
間接排出では産業・運輸・家庭など各部門に電力消費分のCO2排出を割り当てる
*日本政府は、国際的には「直接排出量」を用いるが、国内向けには「間接排出量」を使う。
これは「石炭火力が増えている」事実を隠蔽するためと見られている。日本政府のデータには、こうしたごまかしが多い
*間接排出量ではユーザー側がグリーンな電力に変えても排出量は減らない
●家庭における電力のCO2排出量の増加原因
*電化製品の種類や保有台数の増加
*電化製品の大型化
*世帯数の増加
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【核家族化】【個室化・孤立化】【ハイテク化】
●暮らしの工夫から温暖化防止を!
~決め手は「省エネ」と再生可能エネルギーへの「エネルギー転換」~
*電力契約を再生可能エネルギー重視の会社に切り替え、グリーン電力を買おう
*買い替え時は省エネ製品を選ぼう
*使っていないコンセントを抜こう(特機電力は全体の 6%)
*冷暖房は冷やしすぎ、温めすぎ、つけっ放しをさけよう
*お風呂は続けて入る、一緒の場所で過ごす時間、団らんを増やそう!
*公共交通機関を利用しよう
*ヒートポンプや家庭用コージェネレーションを入れよう
●食料と温暖化
*生産・加工・流通・消費・廃棄という流れの中で大きなエネルギーを使い、
温室効果ガス総排出量の 21%~27%を占める
*大規模農業(単作)は、大型農機運転や農作物輸送、化学肥料や農薬の生産過程に燃料を必要とし、
化学肥料自体からも硝酸塩など温室効果ガスを多く排出
●温暖化と飢餓
*気候変動による生産量の減少や燃料価格の上昇によって食料価格が高騰
*このままでは、価格は小麦 3倍、米 2.2倍になると推測
*輸出価格が上昇すると、貧しい国は輸入できなくなり、飢餓で苦しむ人が増える
*すでに、世界中では洪水や干ばつで 8億 2100万人が飢餓に苦しみ、1億 5000万人以上の子どもたちが発育阻害にある
●食品ロス
*生産されるすべての食料のうち 25~30%が廃棄されている
*食品ロスは廃棄費用だけではなく温室効果ガスも排出(総排出量の約 2%)
*飢餓で苦しむ人が約 10億人いるのに、体重過多・肥満の成人は約 20憶人
●食糧危機を回避するために
*政策や助成金を、大規模農業から持続可能な農法(有機肥料や細粒灌漑などの技術)で小規模農家に転換する
*食生活を、肉から豆類など植物由来のタンパク質に切り替える
・肉食は飼料や水、エネルギーの消費が大きく、環境負担が大きい
・牛肉は 7倍、豚肉は 3倍、鶏肉は 2倍の重量の飼料が必要
・世界では、1962年以降一人あたりの食用油・肉の供給量は 2倍以上となっている
・例えば、米国で牛肉を鶏肉に転換すれば、1億人以上の穀物が節約できる
●ペシャワール会の中村哲医師を偲んで
*緑豊かだったアフガンは、温暖化による干ばつで砂漠化が進行
*加えて旧ソ連、アメリカの紛争で国土は荒れ、飢餓、難民が増えた
*医療支援中だった中村氏は根本問題は食糧問題と気付き、灌漑事業に着手
*5年をかけて全長 30キロにも及ぶ灌漑用水路を作り 1万 5千ヘクタールを灌漑し
農地として蘇らせ、避難していた 60万人が帰還できるようになった。
*多くのアフガン人を救済した偉業を良しとしない人たちの凶弾に倒れた。
※中村先生に、心より追悼の念を捧げます。
●問題を解決するために~グリーンコンシューマ~
*商品が「5W1H(どこで、だれが、どのように)」、「環境問題、貧困問題、人権問題、資源枯渇を起こしていないか」などを考える
*他の国の人々や貧しい人々、地球環境を犠牲にした商品は買わない
知足(知るを足り)、自然に添う暮らしを心がけよう! |