【地球は今…】水問題(2)
日本は、ほとんどの家庭で水道の蛇口をひねれば安全な水を使うことができる。しかし今後も安全な水を使うことができるのか?
日本の水問題を調べてみた。(高木善之、落合眞弓)
●江戸時代の水環境は世界一
江戸は上水道(神田上水、玉川上水など 総延長150km)と下水網の充実、辻雪隠(つじせっちん)=公衆トイレまであり、
糞尿は汲み取り肥料に活用するなどインフラが整い、世界に冠たる清潔な都市だった。
同時代のヨーロッパ諸国では、屎尿(しにょう)は下水や側溝に流すか、路上に垂れ流すのが基本。 |
●近代日本は水質汚染が拡大
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「足尾銅山鉱毒事件」は、日本で初めての公害。銅山から排出された鉱毒が渡良瀬川下流の農作物や農民、周辺の環境に多大な被害を与え続けた。
抜本的な改善策まで84年かかった(この事件での田中正造氏の命がけの活動は有名) -
飛躍的な産業復興や経済発展に伴い工業化と都市化が進み、水質汚染が拡大
・水俣病、イタイイタイ病など公害が社会問題になった
・60年以上たった今も公害の健康被害者は苦しんでいる - その後、水質汚濁防止法などが制定され、産業公害は激減
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近年は地球温暖化による広範囲の汚染が広がった
・水温上昇でアオコの異常発生や水中底層の酸素濃度の低下による水質悪化
・異常気象による台風、豪雨で倒木や土砂の流入など - 3.11後の放射能汚染水の問題は未解決
- 治水・利水(水・電気)のためにと膨大な税金を使い建設した大型ダムは自然を破壊し、その土地に住む人を強制的に立ち退かせ生活を奪った
- 生活排水やプラスチックゴミによる汚染、湖沼など閉鎖水域の水質問題など、いまだ課題は山積み
●大型ダムの問題点
- 利水と言いながら実質は利権。現実には工業水の再利用やエコ型トイレなどで水の消費量は年々減り続けているので、
ダムの水はあまり活用されていない - ダムでの治水は、流域の多くても5%しかカバーできず、近年の集中豪雨ではダムの洪水調節機能が計画を超える大幅な
洪水に対応できていないのが現実 - ダムで水をためると土が流れないので砂浜が消える。放流するとダムにたまったヘドロが大量に流れる。
森が作るミネラルが海に届かないので漁師は魚が獲れない - ダム建設は税金と水道代で賄われる。ダムの高い事業費により水道料金は高騰
- アメリカでは河川環境の修復などのために500個以上のダムを撤去している
★世界最悪のダム事故: 1975年8月特大の台風が中国を襲い、河南省駐馬店の板橋および石漫攤の大型ダムと2基の中型ダム、 |
●日本は逆行! 水道の民営化
- 水道の水をそのまま飲める国は、日本を含む9ヵ国
- 浄水設備は高度成長期に建設され、耐久年数40年を超える水道管が約10万㎞
- その更新費用は1㎞あたり1億円以上
- 市町村が水道事業を担ってきたが、少子化で水道料金収入低下。3割が赤字経営
- そこで、民間企業のノウハウと競争原理を水道事業にと「改正水道法」が成立
- 水道事業の運営権を民間にゆだねることができるようになった
- 民営化すると安全性や料金高騰などの不安がある
- 水は命に関わるものだから水道事業に営利を目的とした民間企業はそぐわない
- 海外では37ヵ国235都市で民営化が失敗、「再公営化」している
●100年後の水を守るために
- ダム建設より、貯水池や遊水地、水田を造る
- 発電はダムではなく、小規模水力発電がコストも安く効率的
- ダム建設より、森を整備するほうが自然環境を守り、事業費は安く効果的
- 森の間伐や下刈りなどの手入れ、植林などに参加しよう!
・手入れがされた森は、元気な土が水を吸収し、きれいな水を育んでくれる - 農業の推進、家庭菜園を始めよう!
・日本の食料自給率は37%。輸入食料は、輸出する国の水を大量に使っている - 雨水を活用するなど節水を心がけよう!
・雨水をためて有効利用、花や草木の水やりやトイレの流し水に
・歯磨きは水を出しっぱなしにすると6L、コップなら300mLと20倍違う - 水を汚さないよう工夫しよう!
・洗濯は生分解性の高い石けんや無リン洗剤を適量使うよう努める
・51%もの人が油を下水に流している。下水管の閉塞、水質汚染を招くのでダメ!
詳しくは、『宇宙船地球号のゆくえ』をご覧ください |