【地球は今…】森林は今(2)
オーストラリアだけでなく、南米や東南アジア、北極圏など世界各地で森林火災が多発している。
現状とその原因について考えてみよう。(高木善之、落合眞弓)
●大規模な森林火災が世界各地で発生
★2018~2020年は、オーストラリア南東部、南米アマゾン、インドネシア、シベリアやアラスカ、米カリフォルニア州、EU域内など世界各地で大規模な森林火災が発生
★原因は経済優先、森林開発もあるが、根本はIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が指摘する「地球温暖化」
●森林火災の現状
★オーストラリア
- 2019年から始まった大規模森林火災は 280日に及び 2020年2月に鎮火した
- 焼失面積は日本の面積の 3分の1近くにあたる 10万㎢以上
- 死者 33人、焼失家屋 3000棟、10億匹いじょうの動物が犠牲に
★南米アマゾン
- ブラジルでは 2019年1~10月に1万8000㎢以上焼失。焼失面積は前年比 7.1倍
- 2011年以降毎年 8月に約2万件、2019年8月は約3万件の森林火災が発生
- ボリビアでは2019年11月までに6万4000㎢の森林と草原が焼失
★インドネシア
- 2019年9月10日から1週間に確認された、火災発生地点数は 8万7960地点
- 森林は泥炭地の 9300㎢が焼失、オランウータンなどえの影響も懸念
- 1000万人近い子どもたちの健康を危険にさらしていると国連が警鐘
★シベリア
- 2019年、シベリアでは 15万㎢が焼失。最悪のペース。
周辺の都市全体が黒煙と有害煙霧に覆われ、北極圏の氷と永久凍土の融解を加速させる恐れがある
★米西部カリフォルニア州
- 2019年、6000件以上の山火事が発生
- 10月には知事が州全域に「非常事態」を宣言。400㎢近くが焼失
- 計画停電など約200万人に影響
★EU
- 2018年、EU域内で失われた森林・土地面積は約0780㎢で、2017年の 6分の1以下だったが、大規模火災に見舞われた国は過去最多だった
- 2019年も欧州全土を熱波が襲い、森林火災が多発
森林火災の原因は
●地球温暖化が原因・・・高温と乾燥
★オーストラリアの場合
- 地球温温暖化とインド洋熱帯海域の寒暖差が大きくなる現象が重なり、平均降水量は平年を 40%下回り乾燥。気温も 40℃超など観測史上最高を記録
- 高温と乾燥を起因とした自然発火。火災旋風により一気に広がる
- 熱風が上空で冷やされ雷雲が発生し、落雷で離れた森林にも広がる
★シベリアの場合
- シベリアの2019年6月の気温は 1981~2010年の平均を 10℃も上回る異常高温
- 気温が 30℃を超える中で発生したドライサンダーストーム(雷だけで雨が降らない嵐)が引き金となり火災が発生し、強風にあおられて広がる
●人為的要因・・・経済政策で森林開発
★アマゾンの場合
- 2019年1月に就任したブラジルのボルソナーロ大統領の経済政策は、それまでのアマゾンの開発規制を緩め、農地や牧草地、鉱山の開発を推奨するもの
- ボリビアでも、モラレス大統領(当時)が、多くの森林で開発を許可し、農地を拡大
- 農園を作るために違法な火入れをし、火災が広がった
★インドネシアの場合
- 企業が農園用地を作る為に泥炭地の水を抜き、乾燥させ、森林を焼き払う違法行為
- 泥炭地は地球の陸地面積の 3%だが、全世界の森林より多くのCO2を貯えている
- 泥炭が燃えると、通常の土地が燃えたときの 20倍にも上るCO2を排出
- 日本の3大メガバンクは、この違法企業に計 10億米ドル超の融資・引受
●森林火災の影響
★CO2など温室効果ガスを排出
- 2019年のCO2排出量は前年比で 26%上昇し、2002年以来最大
- 地球温暖化と気候変動が森林火災を誘発し、森林火災は大量のCO2を排出し、焼失により吸収量が減り、温暖化や気候変動を進行させる悪循環を生んでいる
★生物種の減少、絶滅
- オーストラリア火災では、野生動物以外にも、700種以上の昆虫が絶滅の危機
★煙害:広範囲で気管支炎など健康被害や道路交通障害、空港閉鎖など
- 泥炭や森林の樹木の燃焼は、CO2だけでなく、NO2(二酸化窒素)やSO2(二酸化硫黄)などの有害物質を排出
★不法伐採は感染症に対する免疫の低い先住民を危険に晒す
次回は日本の森林のことと問題の解決方法を考えていきます! |