【地球は今…】森林は今(3)
危機的状況にある森林。今回は、日本の森林を歴史の側面から眺め、現状と森林破壊を止める解決方法を調べてみた。(高木善之、落合眞弓)
●日本の森林の歴史
★里山の出現・・・縄文時代(1万年前)(人口60万人)
- 竪穴式住居で生活。火を燃やすために木を伐採
- 山菜やキノコ、くるみ、ドングリなどの木の実を食料に
- 様々な樹種で石斧柄、弓、尖り棒など木製品を使用
★森林荒廃の始まり・・・飛鳥時代~(人口450万人→1200万人)
- 建築用の木材需要増加や水田開拓のため森林乱伐が進む
- 戦国時代を経て、戦後復興のために木材の需要が増える
★森林再生へ・・・江戸時代(人口3000万人)
- 1650年頃、木材・燃料不足による紛争、河川の氾濫などの災害が増加
- 1710年代には伐採や運搬が可能な場所はほとんど天然林が焼失
- エピソード
*秋田藩家老の渋江政光は「国の宝は山、 山の衰えは国の衰え」
*蘭学者の熊沢蕃山は「山あるときは神気盛ん、草木しげき山は洪水の憂いなし」 - 「木一本、首ひとつ」というほど、厳しい伐採禁止令、流通規制、人工造林、土砂留
工事などを組み合わせた森林保護政策で森林資源を回復 - 江戸市域全体の緑被地率は43%で世界でもまれにみる緑豊かな都市に
★再び荒廃・・・明治時代~(人口3300万人→5700万人)
- 政治的混乱の中、盗伐や乱伐により再び森林荒廃へ
- 産業発展により薪炭消費の増大、建設ブームによる木材需要の増大
- 明治中期は日本の歴史上、最大の山地・森林の荒廃時期
- 1897年、『森林法』の制定により、森林荒廃から回復
★復興のための造林・・・昭和時代~(人口8000万人→1億2千万人)
- 太平洋戦争で再び軍需として多くの木を伐採
- その結果、終戦後、全国各地でそれまでなかったような大水害が発生
- 戦後復興のために、針葉樹中心の人工林に置き換える『拡大造林政策』を実施
- 1960年代以降、安い外国産木材の輸入自由化。化石燃料にシフトして林業が衰退、
木材自給率は低下の一途をたどった(1960年87%から2017年36%)
●日本の森林の現状
- 日本の国土面積のうち森林は7割
- 森林率は先進国中3位 (1位はフィンランド、2位スウェーデン)
- 人工林のほとんどは戦後復興期に大量に植林されたスギ、ヒノキなどの針葉樹林
- 政府が経済発展を優先、第一次産業に対して必要な政策を打たなかった。
そのため林業不振と高齢化に陥り、必要な手入れ(間伐、枝打ち、下草刈り、植林など)ができず、森林の荒廃が進み、山崩れ、洪水などの災害も増えた - 森林の世代交代が進まず、樹の高齢化によりCO2吸収量が少ない
※成長期の若木はCO2 の吸収量が大きいが、老木はCO2吸収量が少ない
日本では人口増加、乱伐と戦争によって森林破壊が進んだが、その度に「その場しのぎの政策」を打つだけだった。 いまもその「おざなり」のやり方が続き、コスタリカで成功したような根本的な政策が打たれず、「本当の森林保護」はできていない。 |
森林破壊の問題解決のために
●自然との共生
- 日本には、昔から人間が自然と共存するために作り上げた里山があった
- 里山は、生態系や森林のシステムを守りながら、人間の生活空間にも必要な栄養や雨をもたらし、さらに自然災害から守ってくれる
- いま世界で「里山」が見直されている
●里山の復活と活用
- 植林と間伐による森林整備、針葉樹と広葉樹の混交林にする
- 竹林の整備や休耕田の活用
- 竹材の有効活用(建築・土木資材、農業資材、竹炭、チップ肥料など)
- 里山を復活させる地域協議会を作り、予算を入れる
●国際的な取り組み
★責任ある森林資源の調達
- FSC(国際的な森林管理を認証する協議会)、SGEC(日本独自の森林認証を行う機関)の「認証」は、「健全で持続的なシステムでの製品であることを認証」するものなので、製品購入時の目安にしよう
- ITTO(国際熱帯木材機関)は、熱帯林の保護と、森林から得られる利益が地域住民に還元されるように持続可能な森林経営を支援する。この活動を応援しよう
『地球村』は、アマゾンの熱帯林の保全活動 『地球村の森』をAsfloraと協働で進めています。 |