【地球は今…】感染症と暮らし(2)
今回は、歴史的な感染症パンデミックが起こった原因とパンデミック後の社会変化を調べ、ウイルスと人間の共存について考えてみた。(高木善之、落合眞弓)
●感染症パンデミックの原因
★人間による生態系への侵入と破壊
- 自然のバランスの崩壊がエイズ、エボラ出血熱などを拡散させた
★植民地主義など世界戦略によって
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十字軍やイスラムによる征服は天然痘の拡散を促進
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シルクロードでは東から西にはペスト、西から東には天然痘や麻疹が運ばれた
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15~18世紀、欧州の入植者によって植民地に天然痘や麻疹などが持ち込まれ、アメリカインディアンやアボリジニなど先住民の8割以上が死亡
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コレラはインドの風土病だったが、宗主国の英国によって世界に広がった
★急速な人口増加と町や都市部の人口密度の増加
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麻疹は人口密度の高いヨーロッパ、北アフリカ、中東の国家で流行
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ペストは野生の齧歯類(げっしるい)から文明圏に住むネズミにノミを介して感染
★輸血や皮下注射針の再使用
- HIVや肝炎ウイルスへの感染
●パンデミックによる社会変化
★ペスト
14世紀のペストの大流行は欧州では人口の急激な減少で価値観が揺らぎ、封建社会崩壊の一因となり近代化に
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ペストへの不安から異教徒(ユダヤ教)の迫害が起きた
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人口の急激な減少から経済的な大変革が起きる
・労働力の急激な減少と賃金の上昇
・様々な分野で専門家が不足、職業に流動性が生まれた
・荘園制が崩壊、地主は農地を貸し出し、農民は生産物を売り、収入を得るようになったことも、封建制から資本主義、自由主義へ
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ペストを止められなかった教会は権威を失墜、宗教改革のきっかけとなる
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近代科学へのシフト、新たな学問や検疫制度が生まれる
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芸術の分野ではルネサンス(厳格な束縛から自由を求める動き)を生む
- ペストは近代化に大きな影響を与えた
★コレラ
感染源は汚染された飲み水や患者の糞便や吐瀉物
公衆衛生の重要性が認識されるようになった
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世界で上下水道の整備が進む
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コレラは「衛生の母」とも呼ばれている
★スペインかぜ
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1918年~1920年
第一次世界大戦の最中で、発達してきた交通網に乗って世界中に広がり大流行。
兵士にも病人や死者が続出し、戦争の継続が困難になり終結 -
終戦は早まったが、ドイツに巨額の賠償金が追い打ちをかけた。
これが結果的にヒトラーの台頭を促し、第二次世界大戦へとつながっていった -
社会不安や価値観の崩壊により、人々は強いリーダーを求めた結果、ファシズムやナチズムが生まれた
★エイズ
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感染の仕組みが不明な段階では、感染を恐れ患者に対する偏見・差別が広がった
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治療には高額な薬を必要とするために貧困地域では治療できず感染拡大
●ウイルスとの共存
★新型コロナウイルスの話題で「ウイルスは危険なもの、敵対するもの、勝つか負けるか」という認識が広がっているが、そうではない
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ウイルスは地球に30億年前に現れ、そこからDNA、生物が生まれてきた
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私たちの体細胞(70兆個)の40%は「ウイルス由来」と言われている
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腸内細菌(100兆個)の中にもウイルスが共存するから総数は1000兆個
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腸内細菌にも善玉、悪玉がいるように、ウイルスにも善玉、悪玉がいる
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悪玉ばかりではよくないが、善玉ばかりでもよくない、重要なのはバランス
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バランスは長年の試行錯誤の結果、完成する
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新型コロナも新型インフルエンザもバランスを完成するには時間が必要
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その間に犠牲を小さくするために工夫や努力が必要
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食事や運動、睡眠、休息など生活習慣を見直し自己免疫力を上げる
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衛生面(掃除や手洗い・うがいなど)に留意しウイルスの拡散を防ぐ
20世紀はウイルスの根絶を目指した時代。21世紀は共存の時代
パンデミックは社会を変えるきっかけとなったケースが多い。 次回は新型コロナウイルスの現状とその後について考えてみます。 |