【地球は今…】自然エネルギー
2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を国際的に表明した日本。
その実現には、自然エネルギー比率を大幅に上げる必要がある。
かつてはトップランナーだった日本は、政策の誤りで世界から大きく遅れをとった。
現状と今後必要な方法を探ろう。(高木善之、落合眞弓)
●パリ協定(2016.11)
このままでは温暖化によって世界的な危機(国土消滅、生態系崩壊、食料危機、紛争など)が避けられないため、2020年以降の目標・取り組みを定める国際協定
★今世紀後半、世界全体の温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にする
- 120ヵ国がゼロ宣言
※「実質ゼロ」とは排出量と、森林や海洋などの吸収量の差をゼロにする
★産業革命以前と比較して気温上昇2℃未満に、できれば1.5℃未満に抑える
- 187ヵ国が批准
●世界各国の現状
★デンマーク
国全体のゼロエミッション実現に向けた法律を2019年に制定。
2050年までにあらゆる形態の化石燃料をやめることを目指している。
現在、風力技術の進展と柔軟な電力網も構築などで国内発電総量の79%を自然エネルギーで達成
★ドイツ
2022年までに原子力発電から完全撤退を決定。
9割以上の市民は再生可能エネルギーへの政策転換を支持し、クリーンでグリーンな自然エネルギー社会を選択。
これを受け、大手電力会社も再エネの拡大、脱原発・脱石炭にmけて再編成を行っている
★コスタリカ
2007年7月6日にノーベル平和賞受賞者のアリアス大統領(当時)は「自然と共にある平和」宣言を行い、「2021年までに世界初のカーボンニュートラル国家を目指す」と目標を掲げ、2015年には自然エネルギーで100%発電を達成
★米国
トランプ大統領、2020.11「パリ協定」離脱したが、バイデン次期大統領は再加入を公約し、グリーンエネルギーのインフラに4年間で約210兆円投入。
2035年までに電力部門でCO2実質ゼロ、建築部門、自動車部門は半減。
遅くとも2050年までに100%クリーン・エネルギー経済、実質排出量ゼロになり、世界をリードする国へ方向転換
★中国
2017年2月に再生可能エネルギー第13次5ヵ年計画を発表。
2016~20年に再エネ電力で40兆円の投資、2020年時点で1300万人の雇用を見込む。
2060年までの実質ゼロを打ち出した。2019年の全電力発電設備に占める再エネ割合は38%。
新規の設備容量の投資に占める再エネの割合は69%。再エネ先進国でもある。
●立ち遅れた日本のエネルギー政策
★2002年原発推進を目的として自民党議員による「エネルギー政策基本法」制定
★2003年第1次エネルギー基本計画では、「原子力の推進」を明確に示した
★民主党政権下、2010年第3次エネルギー基本計画は、
- 2030年に温室効果ガスを25%削減(1990年度比)、2050年80%削減すると国際公約。
2030年の電源構成は原発5割、再エネ2割、火力3割
★東日本大震災後には、国民的議論を重ね「原発ゼロ」をめざす方針を打ち出したものの、閣議決定されないまま自民党に政権が戻った
★安倍政権になり2014年第4次から2018年第5次エネルギー基本計画は
- 2013年度基準に2030年に26%削減、2050年までに80%削減とし、2030年の電源構成は再エネ22~24%、原子力20~24%、火力56%程度を目指す
★2019年12月、COP25では、「化石賞」
- 脱石炭、温室効果ガス削減目標の引き上げを示さなかったため不名誉な受賞
★2020年7月、老朽化した石炭火力はフェイドアウトを決定
★2020年11月、菅首相は「日本は2050年までに、温室効果ガスの排出を実質ゼロにし、脱炭素社会の実現を目指す」と国際社会に表明
★与党内部から「原発の再稼働」に加え、「新設の検討も重要」との声が出ている
★日本は原発に固執し、かつては世界1位のシェアを誇った太陽電池も性能、技術力、価格競争力が落ち、シェアを失う。
一方、中国は石炭火力から太陽光発電にシフト。
2010年代、世界の太陽光発電の生産拠点の主力になり巨大ビジネスに成長、世界のトップシェア
<太陽電池生産量シェアの推移>
2004年 | 2019年 | |
日本 | 50.4% | 0.7% |
EU | 26.2% | 1.7% |
米国 | 11.6% | 2.7% |
中国 | 2.9% | 70.3% |
●自然エネルギー100%の暮らしのために
★知ること・・・気候変動、原発のリスク、省エネのメリット、自然エネルギー
★参加すること・・・勉強、セミナー、ボランティア、地域活動、選挙
★考えること・・・次世代、未来のエネルギービジョン、省エネの方法
★実行すること・・・自然エネルギーの導入、省エネ、政党・政治家を選ぶ