【地球は今…】食べ物編 ~島国ニッポン、おさかな事情
私たちの体を作る「食べ物」のシリーズ。今回は魚食文化と海産物。その現状、問題点について調べた。(高木善之、落合眞弓)
●日本の漁業の特徴
★日本列島は四方を海に囲まれ、複雑な海岸線を有し、島々も多い
★暖流と寒流が流れ、海底の構造も複雑
★周囲が海に囲まれているため、国土面積に対して領海が大きい(世界6位)
★世界有数の大陸棚があるため、多種多様の魚に恵まれている
★その環境で、日本人は豊かな「魚食文化」を根付かせた
●魚食文化とは
★日本には歴史的に、漁業の方法や魚を処理・加工・保存する方法や技術、調理道具や調理法など蓄積された文化がある
★地場で獲れた水産物を刺身や江戸前握り、てんぷら、煮物、焼き物に調理したり、塩蔵や乾燥、発酵させて保存食として独特の風味を持つふな寿司やくさや、干物などを作った。
しょっつる、かき醤油などの魚醤(調味料)も生み出した
★しかし、近年は調理のしやすさ、食べやすさ、低価格志向から魚離れが進んでいる。
その結果、食卓から季節感がなくなり、地場の水産物を食べる機会も減少
●日本の魚介類の生産・消費・自給率動向
★生産量は1965年691万トン。自給率118%
★1984年は1282万トンでピークに、しかし、1980年代後半から急速に減少
★2018年の生産量は442万トン。この30年間で約1/3まで減少
★生産量の世界ランクは1984年の1位から7位へ転落。自給率は59%に減少
★冷凍や流通の発展により、海外の水産物をいつでも入手できるようになった
- エビは2017年、輸入22万トン(93%)、国内産1万7500トン(7%)
★魚の1人当たり年間消費量は、1960年28㎏、1984年40㎏、2018年24㎏と減少
●日本の漁獲量減少の原因と問題
★沿岸から200海里を排他的経済水域と定める国連海洋法条約の採択(1982年)により、日本が操業できる漁場がどんどん狭くなり遠洋・沖合漁業の漁獲量が激減
★乱獲による水産資源の枯渇
- 2015年の漁獲量を最盛期と比較すると、ニシンは5%、マイワシは7%、クロマグロは11%、スルメイカは19%、サンマは20%に激減
- 中国、ロシアの大型漁船の乱獲も大きな原因になっている
★漁業の将来性が見えず、漁師の後継者不足も深刻
- 近海漁業の平均所得は186万円(前年から32万円減)
- 漁業就業者数は減少傾向にあり、2016年は16万人。平均年齢は56.7歳
★地球温暖化による海水温度の上昇による海洋環境の変動
●世界の漁業・養殖業生産量と割合の動向
1960年 | 1989年 | 2018年 | ||||
漁業 | 3476万トン | 94.3% | 8953万トン | 52.1% | 9758万トン | 46% |
養殖業 | 211万トン | 5.7% | 8236万トン | 47.9% | 11451万トン | 54% |
合計 | 3687万トン | 100% | 17189万トン | 100% | 21209万トン | 100% |
★水産物全体の生産量は増えているが、天然水産物は1980年代後半以降ほぼ横ばい。
養殖生産は年々伸びている。2018年は世界は54%だが、日本は24%
●水産資源の危機
★海の環境を壊すような漁法や乱獲により水産資源が年々枯渇
★2017年の時点で、漁業資源の34.2%が獲りすぎのために持続不可能な水準
★漁業先進国である北米、北欧、オセアニア諸国では、国として厳正なTAC(科学的
根拠に基づく漁獲枠・漁獲可能量)を定め 乱獲を防ぐシステムを構築
★日本でも、1996年以来、サンマ、マイワシ、スルメイカ、ズワイガニなど7つの魚種にTACを設定したが、設定や運用が不適切だったため、有効に機能していない
★温暖化による海水温の上昇や海流の変化でサンゴ礁の白化など生息環境の悪化
★マイクロプラスチックが魚に取り込まれるなど海洋環境への影響の懸念
★このままでは海産資源は枯渇し、世界の食料は賄えない
●海の資源を守るための海のエコラベル
★MSCは、水産資源と環境に配慮し適切に管理された、持続可能な漁業で獲られた天然の水産物の「海のエコラベル」で海洋管理協議会が認証
★ASCは、水産物の養殖場所や働いている人たちの労働環境等を審査の対象にした水産養殖管理協議会認証制度
●私たちにできること
★エコラベルの付いた魚を選んで購入しよう!
★地場の魚と旬を知り、おいしく魚を食べる文化を大切にしよう!
★海や身の回りの環境に関心を持とう!