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【地球は今…】食べ物編 ~飽食と飢餓

今回は「飽食と飢餓」について世界の現状を知り、飢餓、食料不安、栄養不良から解放された世界を実現するための方策を考えてみた。(高木善之、落合眞弓)

●世界の食料需給

★世界の穀物総生産量は26.7億トン。1人当たり342kg
1人当たりの必要量は180kgだから、現状では必要量の約2倍ある
★しかし現実には、世界人口の半数近く(30 億人)が食料不足

●世界の飢餓と肥満

2019年、7億人が重度の飢餓で苦しんでいる

  • アジア38,100万人。アフリカ25,000万人。ラテンアメリカは4,800万人

★新生児の 7 人に 1 人、 2,050 万人が出生時低体重
5歳未満の子どもたちの19,100万人が発育阻害、一方3,800万人が太りすぎ
★アジア圏では、ゴミ捨て場から食料を漁る子どもたちが多い
★太りすぎの人が19億人、そのうち6.5億人は肥満
★多くの子どもや若者が、不健康な食品を食べている「新型栄養失調」
★肥満の原因は、栄養の偏りによる不健康な生活やストレス
★日本でも相対的貧困家庭が15.6%もあり、飢餓と無関係ではない

飢餓の原因~自然災害・紛争・貧困

★干ばつや洪水などの自然災害
★紛争により農業や仕事ができない。
 難民となり、十分な食料や水が得られないイエメンでは国民の60%に当たる1700万人、南スーダンでは45%の480万人、
 シリアでは33%の650万人、アフガニスタンでは25%の760万人もの人が緊急の飢餓状態にある(国連)
★慢性的貧困状態で農地、苗や種子、水が確保できない
★貧困ゆえに教育が受けられず、それが貧困の連鎖となっている
★穀物がバイオ燃料へ転用され価格が高騰。穀物が購入できない

 レバノンは政情不安によるインフレの中、20208月の大規模爆発事故によって食糧備蓄庫も大打撃を受けた。
 食料自給率は40%(※)しかないため輸入に頼り、食品価格が3倍に高騰。
 厳しい経済危機や新型コロナウイルスのパンデミックにさらされ、国民の半数以上が食料支援を必要としている。
 ※日本の食料自給率は38

飽食のもたらすもの~肉食・食品ロス

★おいしいものをできるだけ安く、たくさん食べたいという欲求
★世界の食肉消費量は50年間で5倍増

  • 世界の穀物生産量の3分の1が家畜のえさ
  • 牛肉や豚肉1㎏に対して620㎏の穀物飼料が必要
    日本の家畜飼料は4億人分。肉食を半分にすれば2億人の飢餓が救える

★先進国を中心に食料の過剰生産が行われ、食べきれない食料を廃棄

  • 世界の食料生産の17%、推計93100万トンが廃棄
  • 食料廃棄物から出る温室効果ガスは、世界の総排出量の810
  • 日本の食品ロスは612万トンで国連の食糧支援年約390万トンの1.6

食料問題の根本原因~経済優先の文明

★大量生産、大量消費、大量廃棄の社会システム
★化石燃料や資源を求めて紛争地域を作り出す
★先進国が招いた地球温暖化による干ばつ、洪水、熱波などの異常気象
★大規模農園の開発などにより、自給生活のための小規模農地を収奪
★先進国の経済(贅沢)が貧しい国の暮らしを破壊、ますます貧しくなる仕組み

●食料問題のこれから

SDGsの目標は『2030年までに飢餓人口ゼロ』を目指しているが、ここ5年で飢餓で苦しむ人が6,000万人増加。2020年にはコロナ禍がそれを加速。達成は難しい
★人口増加が続き、2050年には100億人を養わなければいけない
★食糧供給の破綻は避けられない。現状を根本から改めなければならない
★現状の農法(大規模、単作)は多量の水や化学肥料、農薬を必要とするため

  • 土地の劣化、水資源の枯渇など環境への影響が大きい
  • 砂漠化など、食糧生産の危機が避けられない

★気候変動の異常気象により、農業は大きな打撃を受ける
★国家間だけではなく国内でも格差の拡大、飢餓人口が増える

食料危機を脱するために

★経済格差の解消へ
★環境破壊の解消へ
※詳しくは書籍『宇宙船地球号のゆくえ』をご覧ください。

●私たちにできること

★買いすぎない、作りすぎない、食べすぎない!
★国内の農業、農家を支えるために国産の食材を購入しよう!
★肉食を減らそう!
★助け合う、協力する、譲り合う、分かち合う!