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【地球は今…】江戸時代(2)~ネットワーク社会

江戸時代は自然と共生した循環型社会といわれている。
どんな社会だったのだろう。私たちは何を学べるのだろうか。
(高木善之、落合眞弓)


●最大の特徴「鎖国」が、循環型社会を生んだ
★江戸幕府は主体的に「鎖国」という外交を選択
*豊臣秀吉の朝鮮出兵の失敗(経済打撃)とキリスト教の拡大を恐れ、1630年代には朱印船貿易を廃止し、渡航禁止令を出す
*ただし例外として、オランダ東インド会社や中国、朝鮮(倭館交易・朝鮮通信使)、 台湾、沖縄、アイヌ(北前船)との交易を認め、珍しいものを輸入した
★先端技術や学問を取り入れ、改良・国産化
*木綿栽培や織物産業は国産化に成功
*桑の栽培を進め、生糸生産、絹織物を国産化し、輸出産業に成長
*中国の陶磁器をまねて伊万里焼、技術が向上し柿右衛門、鍋島が誕生
*レンズから眼鏡、望遠鏡、顕微鏡が作られた
*四季による日の出、日の入りの変化に合わせて速度を変えた和時計
★海では千石船が列島を巡り、陸路では参勤交代によって街道筋がにぎわう

●自然循環型社会
★太陽熱、水力、風力、地力(地熱、堆肥)など
★現代のような資源消費型(食いつぶし)ではなく、永続的、循環的な利用
*農業は、ほぼ完全な自然農法、循環農法を確立した
*漁業は、森と川と海の関係を理解し、資源を保全した
*林業は、『入合(いりあい)』という共同管理と、厳しい伐採禁止で資源を保全した

●リサイクル社会
★衣服はリサイクル
*衣類はすべて機織り機などでつくった手作り(新品は高価)
*大名や富豪は金糸・銀糸、絞りや染の豪華な衣装を纏っていた
*一般の庶民(町人)が新品の衣類を購入することはほとんどなく古着
*毎日同じものを着て、つぎはぎして大事に扱った
*つぎはぎを何度も繰りかえして着られなくなれば、赤ん坊のおしめや雑巾に
*それがすり減って糸くずだけになると釜戸の燃料にし、灰は肥料などにした
★紙類もリユース、リサイクル
*コウゾやミツマタの木の皮(1年で再生)を使って和紙を漉く
*使ったものは襖の下張りなどに利用
*古紙を集めて、ちり紙から下級印刷用紙まで、様々な再生紙に漉き返した
*最後にはトイレットペーパーやちり紙になって、肥溜めで溶け肥料に
★糞便もリサイクルして野菜と交換
*農家の人たちが定期的に糞尿を買い取りにきて、発酵させて肥料に
*「15才以上の者1人につき、大根50本となす50個」と糞尿の交換条件の記録も
★日用品は修理してリペアー
*金属製品修理の「いかけ屋」、割れた陶磁器を修理する「焼き接ぎ屋」、木製の 
桶や樽の箍(たが)を修理する「箍屋」、包丁などの刃物を研ぐ「研ぎ屋」など修繕
職人が街を歩き、修繕・修理し使えるものは徹底的に使う

●日々の暮らしは
★食事
*庶民の食事はご飯と味噌汁と漬物が定番。貧農は芋や麦、ひえなどが主食
*下級武士でも魚は月に数回
*江戸初期は1日2食、中期から1日3食に
★エネルギー
*照明は行燈(あんどん)。菜種油やイワシ油、または蜜蝋の「和ろうそく」を燃やす
*家事、煮炊きは薪や炭
*庶民には暖房も冷房もない。金持ちの暖房は火鉢
*寒い時は綿入れや重ね着。暑い時はうちわや打ち水などで工夫
★教育
*武士は藩校、庶民は寺小屋で学ぶ
*銅活字から製版に発展。浮世絵や出版など印刷文化が発達
*識字率は80%以上で世界トップレベル

●外国人から見た江戸の人々と暮らし
★簡素で清潔で、全体として満ち足りた生活を営んでいる
★生活はゆとりがあり芸術や娯楽は盛んであった

江戸時代の人々の生活は当時、世界トップレベルで、質素、清潔、自然と共生、循環型の暮らしで満ち足りて笑いが絶えなかったという。
 しかし2021年版の世界幸福度ランキングで日本は56位、OECD(先進国)では下位争い、G7では最下位。私たちは、江戸時代に学ぶことは無数にある。