【地球は今…】温暖化(3)~自然エネルギー
気候危機を抑えるためには自然エネルギーは必要だが、自然エネルギーには課題もある。今回は自然エネルギーのあり方を考えよう。 (高木善之、落合眞弓)
●日本国内の自然エネルギー電力の割合と導入状況
*自然エネルギーには、太陽光、風力、地熱、小水力、バイオマス、太陽熱などがある
*総発電電力量はピーク時(2007年)から約2割減少(省エネ、効率改善)
*総発電電力量のうち、自然エネルギーは2010年10%から2021年21%へと倍増
*日本の太陽光発電の累積導入量は約7000万kWで、中国、米国に次ぐ世界第3位
*「自然エネルギーは高い」と言われてきたが、ここ10年で風力発電の発電コストは約40%減、太陽光発電は80%以上減。世界の多くの国・地域で最も安い電源となった
*小規模分散型のエネルギー技術である蓄電池が過去10年でコストが80%減
●自然エネルギー発電の問題点
★太陽光発電(太陽光パネル)
*森林を切り開いて設置される太陽光発電は、環境破壊、土砂崩れの原因となる
*メガソーラー建設は外国ファンド主導が多く「外資による日本の森の買収」といわれる
*農地を転換して設置される太陽光発電所は、再び農業を戻すことは困難
*太陽光の反射で眩しい、周囲がかなり暑い、景観が損なわれるなどの問題がある
*火災の際、放水で感電などのリスクがある
*使用後の大量のパネルの廃棄問題。有害物質が多いなどルール化が必要
★風力発電(大型風車)
*強風による倒壊や落雷によるトラブル
*騒音や景観、バードストライク(鳥衝突)、低周波公害など
★共通問題
*再エネ機器の製造や運搬、設置には多大なエネルギーが消費される
*自然エネルギーは自然(天候)に左右されるため、安定供給できる電力と組み合わせて使う必要がある。その結果、地域で完結せずロスの多い長距離送電が必要となる
●メガソーラー計画をストップさせた住民運動
奈良県平群町でメガソーラーの建設が始まった。山の中腹48haを造成して里山林を全部伐採し、5万9500枚のソーラーパネルを敷きつめる計画に「森林を伐採して何が脱炭素か。水害を起こしかねないのに何が再生可能か」と平群町有志が訴訟を提起(原告1000人近い)。当初は勝つ見込みのない裁判だったが、放水路データに虚偽を発見、工事停止命令が出されて工事は中止している。
自然エネルギーも環境負荷はゼロではないので「自然エネルギーは解決策ではない」との意見もある。しかし、より大きい環境破壊と気候危機を抱える石炭火力や事故の危険性や使用済み核燃料の廃棄問題を抱える原発は、継続させてはいけない。 |
●岸田内閣は原発推進!?
菅前政権では、河野前規制改革担当相や小泉前環境相が主導した再生可能エネルギー重視だった。しかし、岸田内閣は、「原子力村」の甘利幹事長、「小型の新型原子炉の開発の加速」を主張した高市政調会長、「原発を使わないと二酸化炭素削減はできない」と発言した山際経済再生担当相など、原発推進派を要職に据えた。
岸田政権が原発推進に転じないか注視しよう。
●自然エネルギーを使って地域創生
現状の電気自動車、デジタル化、IOT(インターネット化)など大型財政出動や公共投資によって景気拡大につなげようという考え方(緑の経済)では、別の問題を生み根本解決にはならない。自然エネルギーの問題を理解し、人と自然に配慮し、法律や技術の改善を積み重ねて、地域主体の自然エネルギーを普及させていくことが必要だ。
同時に、市民、企業、行政が話し合い、どのように持続可能な町づくりをしていくのかを考え、システムを作ることが大切だ。こうした方向は海外で成功しているように、全国でも住民主導型自然エネルギーで地域創生した事例が増えてきている 。
●地域創生事業の成功例
★岐阜県郡上市石徹白(いとしろ)地区は、住民が団結し、地域の存続を賭けて小水力発電事業に取り組み、特産品を開発、Iターン者も増えて成果をあげている
★岡山県真庭市は衰退する地域の林業と製材業の未来を憂う若手経営者らが中心となり、バイオマスを使った発電や熱利用事業などに取り組み国産材の流通にも成功
事例のような緑のまちづくりが増えて、日本列島が緑一面になることを願っています! |