環境情報

【地球は今…】 私たちの暮らし~衣類について

私たちの便利な暮らしが何によって成立しているのか、知ると知らないでは大
きく違う。今回は、衣食住の「衣」について調べてみた。  (高木善之、落合眞弓)

●日本の繊維産業の現状
*日本の衣料品は 25 年間で、ほとんどが輸入品に頼ることになった
・国内アパレル市場の輸入浸透率
数量で、1991 年に 50%を超え、2003 年には 90%を超え 2020 年は 97.9%
金額で 1997 年 36.1%から 2003 年に 50%を超え、2019 年は 79%
※輸入浸透率とは、輸入量÷(生産量+輸入量-輸出量)×100
*繊維製品の輸入先を地域別にみると、東アジア、東南アジアが多く、国別にみると、
中国からの輸入が 6 割超
*1990 年に約 20 億点だった国内供給点数は、2019 年に約 40 億点へとほぼ倍増
*衣料品の購入単価および輸入単価は、1991 年を基準に 6 割前後の水準に下落
*国内市場規模は、1991 年は 14.7 兆円だったが 2019 年に 10.4 兆円まで減少

安い労働力の安い輸入品によって、服1枚当たりの単価は、1990 年 6848 円から
3202 円に、半額以下になり、市場(売上)は下がってしまった。また単価が安くなっ
たために、使い捨てなどで服の寿命が短くなった。ここでも大量生産・大量消費・大
量廃棄が拡大している。

●日本の衣服の半分近くが売れ残っている
*衣服の消化率 46.9% (消費数量 13.61 億トン÷調達数量 28.99 億トン、2018 年)
*日本で 1 人が年間に購入する服は平均でおよそ 18 着
*1 年間 1 度も着ない服は平均で 25 着
*着られなくなった服の 6 割ほどがゴミとして国内で処分。残りはリサイクルへ
*売れ残った服や寄付に出された古着の一部は輸出される(2015 年は 24 万トン)
*そこで売れなかった服は、さらに繊維くずとして別の国に輸出され “衣服の墓場”に
*古着を大量に受け入れているタンザニアやウガンダなどで作る「東アフリカ共同体」は
2016 年からは外国からの古着の輸入を禁止することで合意したが、古着の輸出大国
のアメリカが猛反発し、圧力をかけたため、「東アフリカ共同体」は輸入禁止を断念

●衣服の環境負荷(環境省調べ)
*原料調達から製造段階までに排出される環境負荷
1着当たりの CO2       約 25.5kg        ペットボトル 255 本製造分
1着当たりの水消費       約 2300ℓ           浴槽約 11 杯分
 製造過程の端材等排出量  約 45000 トン    服約 18 億着分

*2019 年に日本が排出した温室効果ガスは CO2 換算で約 12 億トン
*そのうち、衣類の原材料調達から製造、販売、廃棄まで、海外での排出を含めた
CO2 の排出量は約 9500 万トン。「中小国の一国分の排出量に匹敵する」(環境省)
*衣服の 98%は海外から輸入され、CO2 排出量のうち 9 割は海外で排出されている

●企業と人権問題~消費者としてどのように作られた製品か注視しよう
*2018 年、少なくとも 57 万人のウイグル族の人々が中国の強制的な労働訓練を通じ
て、綿花の収穫を強制
*アメリカの税関当局は、『中国の新疆ウイグル自治区での強制労働をめぐる輸入停
止措置』に違反の疑いで日本のユニクロのシャツの輸入を差し止めた(2021 年 1 月)
*スポーツ商品のメーカーミズノ、下着メーカーのグンゼは原料調達停止
*この問題は、アパレルメーカーだけではなく、太陽光パネル、食品メーカーまで影響
*国際 NGO(※)は日本企業 11 社などグローバルのサプライチェーンなどで関与を指摘
(※)国際人権 NGO ヒューマンライツ・ナウ https://iil.la/x91WluF 参照

●私たちにできること
1.ほんとうに必要なものだけ買うなど、まずは消費を減らす
2.長く使えるものを買う
3 繕ったり、リメイクをしてできるだけ長く使う
4.再利用や共同使用を工夫する
5 最終的にはリサイクルや再資源化に回す