『地球村』のスタンス

星新一ショートショート(2022.10.04)

★星新一のショートショート
2 流刑の惑星
・そこは未来の地球のような荒れ果てた砂漠。囚人の持ち物はブラックボックス一つ。ボタンが一つ付いているだけ。ボタンを押すとブラックボックスから引き出しが現れ、運が良ければコップ1杯の飲水が飲める。運が悪ければブラックボックスが爆発して囚人は死ぬ。囚人はブラックボックスを持ち運ぶか、引きずって歩くかしかない。
 男は、なぜここに送られたのかわからない。過去を思い出そうとするが、記憶もぼやけていく。過去のこと、今のこと、いろんなことを考えながらブラックボックスを携えて歩き続ける。
 時々、遠くで爆発音が聞こえる。
 一度、自分と同じようにブラックボックスを携えてさまよう男に会った。2人は身の上話を交わした。ほぼ同じような身の上で、ほぼ同じようなことを考えていることがわかった。しばらく話し合ったあと、別れを告げて男は歩き始めたが、まもなくすぐ後ろで爆発音が聞こえた。先ほどの男性が爆死したのだ。
 男もボタンを押すたびに爆発しないかヒヤヒヤするが、渇きには勝てなくてボタンを押す。幸いいまのところ、まだ水が飲めている。
 何ヶ月たったのか、何年たったのかわからないが、ある日、荒れ果てて崩れそうな家が見つかり、中に入る。中も荒れ果てて崩れそうになっている。部屋の隅にバスタフがあった。男はその中に入り横たわる。
 覚悟をしてブラックボックスのボタンを押す。幸い水が出てきた。それを飲み、更にボタンを押した。また水が出たのでバスタブに注いだ。またボタンを押してみるとまた水が出たので、それもバスタブに注いだ。彼はブラックボックスからコップ1杯の水を出してはバスタブに注ぎ続けた。
 幸いブラックボックスは爆発せずに水を出し続け、ついにバスタブは水で一杯になった。男は首まで水に浸かりながら、
 こういう暮らしもいいもんだ。
 男は、久々に安らぎを味わった。
 
 その崩れそうな家がズームアウトされ、そして爆発した。

※実はこの流刑の惑星は地球のことではないだろうか。囚人は私たち自身ではないだろうか。人は誰でもいつか死ぬ。そしていつ死ぬかわからないままに、1日1日を過ごしている。ある者はいつも死を意識し死を恐れ、ある者は死を意識せず、ひたすら動き回り、ある者は死を意識し、死の準備をしている。
 どのような生き方が、どのような死に方がいいのだろう。人はみんな自分では自分の生き方を決められるが、それを真剣に考える人はどれくらいいるのだろう。

・臨時国会が始まった。
 岸田政権は国葬、統一教会問題で支持率が差の低下が続き、苦しい中での臨時国会が始まる。岸田首相への「説明不足、検討するばかりで方向が決まらない、聞く力が無い」など不満と不安が高まる。
 安倍晋三がいなくなったことで自民党全体が揺れている。野党としては今がチャンスだが、一向にまとまる気配がない。