【地球は今・・・】食料の複合的危機
ウクライナ侵略、アベノミクスの失敗など様々な要因による円安、物価の高騰で家計が逼迫している。世界と日本の食糧事情について調べてみた。 (落合眞弓、高木善之) |
●世界的な食糧危機
- 特に小麦など穀物価格が高騰
- 食料価格指標はオイルショック時を越え過去最高値
- 2022年(1月から4月の平均)は2014~2016年平均の約1.5倍
- グテーレス国連事務総長は「数カ月以内にアフリカなどで何千万人もが栄養失調や飢餓に陥る恐れがある」と警鐘を鳴らしている
FAO食糧価格指数の推移
穀物、植物油、乳製品、砂糖、食肉の国際価格を2014~2016年を100として指数化
●価格高騰の原因
ロシアのウクライナ侵攻の影響
- ウクライナの輸出シェアは、トウモロコシが13.0%、小麦が8.3%、ヒマワリ油が46.7%だが、生産力と輸出量が減少
- ロシアの穀物禁輸対象国の拡大など輸出量減少
- 両国は、化学肥料の「カリ肥料」の主要輸出国であり(世界シェア30%)、化学肥料の価格は、昨年夏の2倍に高騰
生産の減少と需要の拡大
- 地球温暖化による異常気象(洪水、干ばつ、バッタの大群、鳥インフル、豚熱など)による生産の減少
- 途上国の人口増加、新興国の食肉増大、穀物飼料の消費拡大
- トウモロコシや大豆のバイオ燃料への流用の高まり
食糧の囲い込み拡大
- 食糧需要の拡大の中、コロナやウクライナ侵略で世界の分断、流通や生産が滞り、自国優先、輸出規制
- 多国籍企業が巨大なルートで市場を独占。ロシア軍のウクライナ侵略で資産が急増
カーネギー社(米国)など世界の穀物メジャーは、生産、購入、販売などの一極集中で世界の穀物を独占し巨大な富を得ている。この富が集中するフードシステムは1960年代の「緑の革命」の負の遺産と言われている。 ※「緑の革命」は、品種改良、機械化、農薬の大量使用により生産が向上したが、土地の劣化、農家の借金、途上国の累積債務、貧富の拡大などを招き、企業が農業を支配するという現状につながる大きな問題を生んだ。 |
●日本の食糧事情
急激な円安(2020年1月1ドル109円⇒2022年9月1ドル140円台、30%アップ)
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- 小麦粉、植物油、パン、カップ麺、スナック菓子など身近な食品が軒並み値上がり
- 肥料(尿素3.2倍、リン酸アンモニウム3.5倍)、飼料は2倍に、燃料も高騰し、生産費に対して卸(おろし)価格が安いので農業が続けられない
●ピント外れの日本政府
- 「輸入品の方が安い」として国内農家の育成をおろそかにしてきた。これは日本政府の多くの分野に共通する大きな問題である
- 2012年の世界的不作で食料高騰の時、G7で世界の食糧危機にどう対応するか話し合われたが、日本政府は「一過性の問題」と判断し、対策を取らなかった
- 安倍政権以降、農政の目玉は「輸出5兆円とデジタル農業」「儲かる農業」で大規模化や機械化を支援 ⇒農業の法人化は3万経営体ほど。日本の食料を担えない
- 今年に入り、急に「食料安全保障」と言い出したが、本気ではない (下記の表を参照)
▼諸外国の食料自給率の比較と農業予算の推移
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日本 |
米国 |
仏国 |
中国 |
韓国 |
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食料自給率 |
37% |
132% |
125% |
99% |
39% |
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一人当たりの農業予算 |
2019年度 |
13,598円 |
30,288円 |
27,929円 |
25,269円 |
36,740円 |
2005年度 |
15,980円 |
30,284円 |
35,290円 |
1,968円 |
22,354円 |
●日本政府の農政がまねいた現状
- 農業専従者数は1985年の347万人から2020年は136万人まで減少(6割減!)
- 農業専従者の平均年齢は67.8歳、70歳以上の層がピークで後継者問題が深刻
- 耕作放棄や宅地に転用等で、農地面積は1965年600㏊から2020年437㏊に減少
- 食料自給率は、1965年度73%、2020年度37%まで減少
- 食料安全保障の崩壊。有事の時に国民の命を守れない
和食のほうが自給率が高いね!
●持続可能な農業のために
- 化学肥料や農薬に頼る石油依存型農業から有機農業へ
- 大型機械や不自然な技術(遺伝子組み換え・ゲノム編集)から、地域に根差した農業技術、種を生かし地産地消を推進する