【地球は今・・・】原発回帰に急転は危険
岸田政権は、ロシアのウクライナ侵略の影響による化石燃料価格高騰などに乗じて、従来の原発政策を急転換させた。この問題について考える。 (落合眞弓、高木善之) |
●原子力発電所の現状(2023 年 1 月 4 日現在)
状 態 |
基 数 |
40年超 |
30~39年 |
29年以下 |
再 稼 働 |
10 基(内 停止中1基) |
1 基 |
5 基 |
4 基 |
稼働許可済 |
7 基 |
3 基 |
1 基 |
3 基 |
稼働審査中 |
10 基(内 新規 2 基) |
0 基 |
4 基 |
6 基 |
稼働未申請 |
9 基(内 建設中 1 基) |
0 基 |
3 基 |
6 基 |
廃 炉 決 定 |
24 基 |
新規・建設中を除く運転可能の 33基の平均運転年数は 31 年 |
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運転可能炉合計 |
36 基 |
資源エネルギー庁 HP より https://onl.la/zkWF6eT
●福島原発事故後の原発政策
▼世界は脱原発へ転換
- 世界の発電量の原発比率は 1996 年 17.5%から 2021 年には 9.8%と半減
- ウクライナ戦争に伴うエネルギー危機により、ドイツは原発を 2022 年末までに全廃と決定していたが、予備電源として冬季に稼働させ 2023 年 4 月 15 日には停止する
- 各国は再生可能エネルギーの普及を推進、2 年後には最大の発電源になる見込み
▼日本は迷走後、逆転
- 民主党政権は 11 都市で討論型の意見聴取会で民意をくみ取り、2012 年 9 月、「2030 年代までに原発ゼロ」という目標を掲げた
- 安倍政権になり、2014 年「エネルギー基本計画」で「依存度を可能な限り低減する」としつつ、「原発はベース電源」として原発再稼働を進める
- 岸田政権は 2022 年 8 月 24 日、脱炭素社会の実現に向けた政策を検討する「GX実行会議」で、原発の運転期間延長や次世代原発の開発・建設を検討する考えを示し、実質的に原発回帰を指示
- 12 月 22 日の開催した同実行会議で基本方針(次ページ)を取りまとめた。
▼原発回帰の言い訳
- ロシアのウクライナ侵攻で世界のエネルギー情勢が一変し、エネルギー価格高騰や電力需給逼迫に直面、エネルギー安全保障の重要性を強調
原発回帰は時代錯誤。次世代原発の開発、新設には、調査や地元合意を含めると30 年以上かかる。まず世界の流れに合わせて本気で再生可能エネルギーに注力すること、社会全体で節電やエネルギーの効率化に取り組むことが不可欠だ。 |
●原発回帰の中身と問題点
▼新規制審査済みの 7 基を 2023 年夏から冬にかけて再起動させる
- 実効性のある避難計画も無いまま、地元了解なしの一方的な宣言
- 特定重大事故対処施設が未完成
- 指示された再稼働の内容では、東北、東京エリアの電力不足に対応できない
▼既設原発の運転期間を 40 年から 60 年に延長、さらに休止期間を上乗せ
- 設計時の運転期間を、政治的に延長するのは言語道断
- 建物の経年劣化、電線や配管、システム全体の劣化
▼次世代原発の開発、新設、増設
- 小型モジュール炉は発電規模が小さく建設コストが割高、数が必要なので事故リスクが高くなるなど、世界でも賛否両論
- 核融合炉などは開発期間、安全保障の面から非現実
●政策決定方法など政治手法の問題
▼福島原発事故はまだ事故処理の見通しもなく、復興も道半ば
▼岸田首相が言い出して、殆どが利害関係者の委員会で、わずか 3 ヵ月で決定
▼国民不在、岸田首相の「聞く力」はどこにあるのか
▼安倍政権以来、再生可能エネルギーへの投資は小さかった
▼国会軽視、閣議決定だけで推し進めようとしている
●決めるのは私たち国民
温暖化防止、温暖化ガス削減に対して、原発は決して有効な手段ではない。
私たちは、以前の『原発安全神話』と同じように、『原発は温暖化ガスを出さない神話』に騙されている。原発の製造コスト、燃料コスト、事故リスク、廃炉コスト、放射性廃棄物の処理など未解決のまま進んではいけない。
★次号に続く・・・
🎶 こちらも参考にしてください(^^)/🎶
*高木善之著 小冊子 260 円 https://nev0.com/1x1lED7 『大震災と原発事故の真相』 *地球村通信 2022 年 5 月号 https://nev0.com/3vXsvnu 【地球は今…】 原発事故とその費用 *地球村通信 2018 年 3 月号 https://nev0.com/3W5fy5u 【地球は今…】原発問題 *地球村通信 2011 年 5 月号 https://nev0.com/3IHP6ff 【地球は今…】 5 分でわかる!原発がいらない理由 |