スペシャル対談

2011年8月号 ASFLORA 代表 佐藤卓司さん

ブラジルのベレン市に本部を持つASFLORA(アスフローラ)は、2月に高木代表がアマゾン視察に訪れた際、現地でお世話になったNGOです。

代表の佐藤さんと意気投合し、今後の支援協力を約束、協働事業として「地球村の森」がスタートしました。4月末には、地元の子どもたちがASFLORAの植林環境プログラムに参加し、「地球村の森」に植樹をしてくれました。

 

子どもたちに環境教育を

 

高木 その節は大変お世話になりました。まずは、佐藤さんのアスフローラの活動を、簡単にご紹介いただけますか。

佐藤 一番力を入れているのは環境教育です。森作りにしても、森を作るだけではなく、守っていかなければならない。その環境意識教育を、子どもたちを対象に行っています。子どもたちに教えることは、一番成果が出るし、将来に結び付くことなんです。

高木 永大産業(住宅設備メーカー:佐藤さんの元の勤務先)の時代からやっていたのですか?

佐藤 そうですね。最初、永大ブラジル(子会社)でNGOを作ったんです。当初は従業員や家族、植林地の周りの人たちを招いて、環境教育と植林を始めたのですが、子どもたちを招待するのがいいなあと思って。

2004年に私は会社を辞めたのですが、NGOを続ける人がいないというので、「じゃあ、NGOを社外に出して私がやります」ということになって、現在の形になりました。

高木 環境教育がプロジェクトの第1号とすると、第2号プロジェクトはなんですか。

佐藤 2つ目は森づくりです。植樹祭をやって、宮脇方式(土地本来の森作りの達人、宮脇昭先生の提唱する混植・密植型植樹)で植えています。

高木 最初から宮脇方式を採用したのですか。

佐藤 そうです。永大ブラジルは三菱商事との合弁で始まったのですが、91年に三菱商事が宮脇先生をお招きして、画期的な方法だからやってみようということになって、92年から宮脇方式の植林を始めました。今年で20年目になります。

高木 そうでしたか。20年目といえば、『地球村』もちょうど今年が20周年なんですよ。

佐藤 それは互いにちょうど、いい節目にお知り合いになれましたね。

 

森を守りたい人を増やします

 

高木 教育と植林、その他にはどんな活動を。

佐藤 森を守るためには、生活のために森に入ってきて森を切り開く開拓農民の生活も守らなくちゃいけないというわけで始めたのが、アグロフォーレストリィ(森林農業)システム支援プロジェクトです。

開拓農民は、いわば不法侵入者なんですが、いろんな人がいて、農業を真面目にやりたい気持ちを持っている人たちもいるんです。そこで、熱帯アマゾンでも持続できるような農業ができるよう手伝おうという活動です。

高木 ああ、あれはたまらなかったなあ!佐藤さんが、開拓農民と仲良くしていて、子どもたちを抱き上げて「大きくなったなぁ~」なんて声をかけているのを見て、涙が出そうになりましたよ!

今年は森林年でもありますし、アスフローラとしても、森作りに力を入れていくのですか。

佐藤 いえ、今まで通り続けていきます。「森の劇」を通して森を守る気持ちを伝えているのですが、以前参加した学校からまた来てほしいといった要望がたくさん来ているんです。

▲森の精が現れて、森を守ることの大切さ、植林の意義を伝えてくれる劇。

環境教育がなければ、今まで植えたところも風前の灯になります。木を植えると、みんな森が残ると思っちゃうんだけど、土地っていうのは、一寸先はどうなるかわからないんです。そんなとき、森の大切さへの理解や、「皆伐、乱伐はだめ」という世論があれば守ることができます。

高木 法律的には「伐採禁止」でしょう?

佐藤 その通りです。8割残せという厳しい法規があります。しかし地元の人は、生活のためには開拓も仕方がない…と融通を利かせてしまう場合が多いんです。どこで調和を保つかが難しい。

できない法律を押しつけるから、余計、融通を利かせなくちゃいけなくなるし、その融通もどこまで利かせるかが監督官の権限になってしまうから、賄賂も発生するし、それがブラジルの一番悪いところですね。

高木 昔から、森林伐採では流血の歴史がありましたね。

佐藤 今の大統領は女性で、今までよりもしっかりしてきた気がします。これで、だんだんよくなるのかもしれないなあと思っています。

 

自然エネルギーを推進しましょう

 

高木 ところで、日本のニュース、たとえば原発のことはどのくらいご存じですか。

佐藤 私はどっちかというと技術優先だったから、そんなに危ないものじゃないと思ってきました。

でも今回のことで、原発は大事故が起きてしまったら取り返しがつかないものだとわかりました。でも高木さんは前から反対してこられた。それはどういうところから感じとっていたんですか。

高木 そうですね。大学では専攻が物理学だったことや、京都大学の原子力研究所に実習に行っていた経験がありましたから、原子力や原発は到底人間がコントロールできるものではないと確信していました。なにしろ当時も、京都大学の原子力研究所では原発反対の学者が揃っていました。

今回も地震後、制御棒は挿入されたのですが、挿入されたら原子炉は停止すると思っていますよね。でも停止ではなくアイドリング状態なんです。

自動車もアイドリング状態でラジエーターから冷却水が抜けたらエンジンは焼けますよね。今回の事故は、地震で圧力容器が大破⇒冷却水が流出⇒炉心が露出⇒メルトダウン⇒水素爆発⇒大量の放射性物質を放出。わずか1週間でアメリカから欧州へと全世界に広がったのです。

佐藤 そうなんですか。大変なことなんですね。自然エネルギーにすぐに替われるものじゃないし。エネルギーを使い過ぎているってことですか。

高木 使い過ぎももちろんあります。でも今年、全世界で原子力の発電量と、自然エネルギーの発電量は、逆転したんですよ。日本はまだたったの1%ですが。

佐藤 日本は、地熱がたくさんあるんでしょ。それが利用できないのは、温泉法と自然公園法と聞きましたが。

高木 地熱も小型水力も風力も必要ですが、それを妨げているのが原子力を推進する国策です。

佐藤 そうなんですか!

高木 『地球村』サイトに「5分で分かる!原発がいらない理由」というページがありますのでごらんください。驚くべき事実、恐るべき真相が書いてあります。

佐藤さんとは、これからも協力し合って森のことをやっていきたいと思っています。ぜひよろしくお願いします。

■ASFLORA(アマゾン森林友の協会)
 http://asflora.org/jp/