2006年6月号 『お金のいらない国』著者 長島龍人さん
昨年4月「愛・地球博」市民対話劇場で行われた「ストップ・ザ・温暖化キャンペーン」のイベントにゲスト出演し、『お金のいらない国』の寸劇で会場をわかせた長島龍人さん(写真右)は、作家、アクター、ミュージシャンとして活躍するサラリーマン。そして今年からは、高木さんが主宰する「人間塾」に参加されています。塾頭と塾生の楽しい対談が始まりました。
『お金のいらない国』は本質を突く作品
高木 こんにちは。名古屋からようこそ。今日はざっくばらんな感じで話しましょう。まずは、私たちの出会いの話から。
龍人 はい。昨年、「愛・地球博」で行われた、『地球村』の「ストップ・ザ・温暖化キャンペーン」プロジェクトに、僕の書いた『お金のいらない国』の寸劇で、ゲスト出演させていただいたのが最初の出会いです。そのとき『地球村』の人たちに、寸劇があまりにも大ウケでびっくりしました。
高木 現代人がタイムスリップした未来では、お金というものが存在しない。それでいて人々は喜んで社会のために働き、世の中はスムーズに回っている。これは普通なら、寸劇を見ている人も、主人公の若者と同じように戸惑いを覚えるストーリーなのかもしれないけど、『地球村』の理念やビジョンをよく理解されている人にとっては、「ああ、そうだよね。未来はこうなっているはずだなあ」と、すんなり受け入れることができる話だから、みんなに大いにウケたのも当然なのでしょうね。
龍人 そうなんですよ。僕はその日、高木さんのお話を初めて聴かせていただきました。地球環境の現状についてほとんど知らなかったものですから、非常に驚きました。それから、講演を聴きに行ったり、ワークショップに参加したりするようになって、「世の中、このままじゃいけない。現状を突き詰めて考えていけば、僕の『お金のいらない国』が理想社会になるじゃないか」と思うようになりました。
高木 それがすごいね。私の講演を聴いて、地球環境や世界の現状を知ってびっくりしたというけれど、それを知らずにあの本を書いたことが、私には驚きだったなあ。あなたが、ホームページで発表している『クローン』『臓器移植』『ふたりのおじいさん』とかもね、「ブラックな短編」と書いてあるけれど、『地球村』的に考えるとあれは、そのものズバリ、この社会の事実をわかりやすく書いているショートショートだよね。龍人さんも、世の中の仕組み、戦争の仕組み、お金の仕組みなどが分かった今、読み返してみると、自分の作品の深さに、改めて気付いたのじゃないでしょうか。
龍人 そうですね。『地球村』に出会って、世の中の本質が少しずつ見えてきたので、僕も自分の作品が改めておもしろく読めるようになりました(笑)。僕は最初、この社会がおかしいということに薄々気付いていて、何でだろうとすごく疑問を持ったんです。実際、お金にしたって、あんなものは、ただの紙切れだし、お金が流通しなくなっても、みんなが仕事さえしていれば社会は成り立つんじゃないかと思ったことが、『お金のいらない国』を書いたきっかけなんです。
高木 そう、この世の中の大量消費、貧富の差、戦争、環境破壊のほとんどは、お金のために起きているのだからね。
龍人 『地球村』の会員さんの中には、「そんなこと当然!あたりまえ!」と思ってくださる方たちがたくさんいらっしゃることにびっくりしましたし、このつながりが嬉しいなあと思っています。
高木 龍人さんが思いつきで書いたことが、実は本質を突いていたんだよ。でも、まだまだ気付いていないことがたくさんあるのじゃないかと思うよ。これからが楽しみだね。
全く腹が立たなくなりました
高木 龍人さんは、この1年、『地球村』に関わって、本を読んだり、講演を聴いたり、ワークショップに参加されたりしましたが、自分で変化したなと思うところはありますか。
龍人 「五事を大切に」とか、「非対立」とかが、僕の中ではキーワードになっています。人と接するときは、いつも念頭に置いています。「よく見る、よく聴く、受け止める、わかる、変わる」これをやっていきたいです。
高木 うれしいですね。それが人間関係の基本だからね。
龍人 本当にこれができれば、すべてうまくいくと思うんです。
高木 心掛けた結果、何か変化はありましたか。
龍人 家族や友人、会社でも、人間関係がうまくいっています。以前は腹を立てることもあったのですが、今は立てなくなりました。「腹は立たない。立てているだけ」というのは高木さんから教わった言葉ですが、本当にその通りで、つまりは、自分次第なのだということが分かって、変わったのだと思います。
高木 うれしい変化ですね。でも、龍人さんは、最初に会ったときからひょうひょうとしていて、500年後の未来人そのものという感じだったから、腹を立てる人には見えなかったなあ。「以前は腹を立てる人だった」なんて言われても、それでも信じられないくらいだよ。
龍人 いえいえ。でも、そう言っていただくとうれしいです。あとは、「非対立」とは「避対立」(対立を避ける)ではなく「対立に非ず(あらず)」ということを教えていただいたのも大きな気付きでした。以前は、「対立」はやむをえないものと思っているところがあったんです。でも「対立する必要なんて、最初から全くないんだ」という考え方は、僕にとって非常に納得できたのです。
高木 そうだね。我慢することや避けることじゃなく、「対立」なんて元々ないんだよ。
龍人 例えば、こういう場合、腹を立てなくちゃいけないとか、対立しなくちゃいけないとか、そういう世の中の風潮もあるのだけれど、僕には腹を立てないことのほうがずっと楽なんです。
高木 この世の中、おかしなことだらけだからおかしな思い込みがありますね。「君、面子を傷つけられたんだぞ。怒れよ」とか「ここで我慢しちゃダメでしょ」とかね。
龍人 「ちょっと、あなた。言ってやんなさいよ!」とか。
高木 あはは…。そんなものって本当はないんだよね。
龍人 そうですね。
高木 じゃあ、夫婦げんかとかも減った?
龍人 もうケンカは誰とも全然ありません。前はよく口げんかをしましたが、劇的に減ったんです。何かあっても、受け止めるようにしています。
高木 そう!よかったね。ところで、かなり痩せたみたいだけど…。
龍人 高木さんの講演で、アフリカなど世界では、毎日3万人以上の子どもたちが死んでいることを知って、食事の量が減りました。食べ過ぎたり、あまり肉食をしたりしてはいけないと思って。
高木 それで体調は?
龍人 半年で7キロ痩せたんですが、すごく体調はいいです。
高木 そうかあ!それは本当によかった(笑)。
お金のいらない国を広めましょう
高木 最後は本の話題にしましょうか。『お金のいらない国』を最初に出版したのはいつ頃のことですか?
龍人 2003年です。2年間で1000冊売れました。『地球村』に出会ってからの1年間で3800冊。それから、『お金のいらない国2』を『地球村』で出版していただき、おかげさまで、わずか半年に2000冊が売れ、それもまた増刷中です。
高木 今月下旬には『お金のいらない国3』が出ることになりましたね。これはどんな内容なのか、PRしてください。
龍人 えーと…、副題が「病院の役割は?」になりまして、警察や裁判、法律、犯罪などを描いた内容なのですが…。
高木 ちょっとタンマ! その説明はおもしろくないなあ。私なら、「3では、今までの設定と逆で、未来人の紳士が現代にやってくるんですよ!」と言うなあ(笑)。そうしたら、聞き手は「へえ~それで、どうなるの?」と訊けるのになあ。
龍人 ああ、そうですね。はははは、すみません。じゃあ、やり直します。「紳士がこちらの世界に来るんですよ!」
高木 あっはっは…。じゃあ、「で、どうなるの?」
龍人 青年の家にやって来た紳士が、現代の新聞を見て、世の中のおかしさにいろいろと気付いていくという…。
高木 あ~あ、龍人さんは、書くのはうまいけど、しゃべりは下手だなあ。「例えば、新聞。あれを紳士が見たらどう感じると思いますか。犯罪、政治、社会面、本当におかしなことだらけでしょう?それからどうなるかは、読んでもらってのお楽しみ ♪」みたいな感じにしゃべれないかなあ。
龍人 ははは…。しゃべるのは苦手なんですよ。
高木 そのキャラクターがいいんだよなあ。「その3」も、とても楽しみだね。これからも、「その4」「その5」と素敵なアイデアでみんなにショックを与えてくださいね。
龍人 ありがとうございます。
高木 今、各地で『お金のいらない国』の劇団(りゅうじん一座)ができつつありますね。その話で締め括りましょう。
龍人 僕の寸劇は、セリフは音源として別にあって、それに合わせて動くスタイルなので誰でもできるんです。紳士と青年と最低限2人いれば成り立ちますし、上演してみたいという方はメールで僕に連絡くだされば、セリフの入ったCDをお送りすることもできます。
高木 それはいいね。あの寸劇は本当に分かりやすいし、各地で芝居心のある人が上演して、どんどん広めてほしいと思います。
龍人 そういうことになったらうれしいです。『お金のいらない国』ってどんな国なんだろうって、想像する人が増えていけばいいなと思います。
高木 『地球村』の生き方もアピールしてくださいね。
龍人 はい。今後とも、よろしくお願いします。